現在実際に行われている和服地に対するシミ抜き法がどの程度シミ除去効果に有効であるかを調べた.
すなわち絹布に対して親和性のない塩化ナトリウムを水溶性汚れモデル物質として用い, 蒸留水によりすすぐ場合, 叩く条件や衝撃圧を変化させて叩き出す場合 (モニターおよびモデル装置による) , 前処理剤や溶剤を変化させてドライクリーニング処理を行った場合などについてシミ除去効果を検討した.
その結果次の事項が判明した.
(l) 水によるすすぎ効果がもっとも大きい結果であった.
(2) モニターによるシミ除去効果では, 除去率は約65%程度であり期待したほどのシミ除去効果は得られなかった
(3) モデルシミ抜き装置では, 衝撃圧に比例してシミ除去率は高く, また叩き布がわたより金巾の方がシミ除去効果が大きい結果であった.
(4) ドライクリーニングのみでは殆どシミが除去されず, 前処理剤を加えるとシミ除去率は30~70%になりシミ除去効果が向上した.
これらの結果, 塩化ナトリウムを水溶性汚れモデル物質としたシミ除去実験では水がかなり除去効果をあげることがわかった.しかし, モニターおよびドライクリーニング処理によるシミ抜きが期待したほどのシミ除去効果が認められなかったことは興味深い.
また, 水を十分使った場合は, 水処理による和服地の脱色, 移染, 色泣き, 収縮などの問題が考えられることから今後はこの面の検討を要すると思われる.
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