前報で, 繊維組成, 織物組織, 糸構造, 仕上げ工程の異なる紳士用スーツ地のクリーニングによる寸法, 力学的性質, 風合い変化を洗たく操作, 仕上げプレスによるものに分離して検討した.本報では前報の試験片による結果と衣服との関連について検討した.そのために試験片の寸法を変えた場合, 表地と裏地を縫合して縫目拘束, 副素材の影響についても検討した.他方, 着用と洗たくの繰返しによる変化についても考察した.
その結果, 洗たくによる寸法, 力学的性質, 風合い変化には試料寸法の影響はみられない.試験片の縫目拘束効果は寸法変化に認められ, 縫合される布の収縮差が互いに影響する.衣服の寸法, 力学的性質の変化は試験片とは異なり, 縫目拘束, 副素材, 洗たく時の機械力が相互に関連し合う.洗たく後に繰返し変形を与えた場合の力学的性質, 風合い変化挙動は, 羊毛とポリエステル試料では異なるが, いずれも洗たく履歴を有するものは変化幅が大きく性能劣化が認められた.
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