本研究は, 血液たん白質汚れの洗浄に動物および微生物を起源とする細胞外酵素を応用するための基礎研究として, プロテアーゼの基質特異性ならびに洗浄液中のプロテアーゼ活性が血液 (全血, 脱繊維素血, 血漿および血清) 汚染布のたん白質汚れの除去に及ぼす影響について検討した.
その結果, 繊維基質上で凝血して血清を分離する血液汚れは, 一般の水溶性たん白質汚れに比し, 変性を伴う経時変化を受けやすく, また繊維基質上で薄層化するため水に対する溶解・分散性の低下が大きくなり, 繊維から除去しにくくなるが,
Bacillus subtilsin var.を生産菌とする基質特異性の広いアルカリ性細菌プロテアーゼ,
Aspergillus oryzaeを生産菌とするゼラチンの粘度低下力の大きい中性およびアルカリ性糸状菌プロテアーゼ, などのendopeptidase作用力の強いプロテアーゼは, 血液汚れの洗浄性を著しく高め, 特に水に対する溶解・分散性の低い血清汚れでは, 25PU/ml以上のプロテアーゼ活性で洗浄率を50~65%増大させることが明らかとなった.
また, 全血ならびに血漿汚れに含まれるフィブリノーゲンは, 汚れの水に対する溶解・分散性の低下に関連し, 一般に洗浄率を大きく低下させる.
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