今日の衣料品市場には, 種々雑多な情報が氾濫している.しかも消費者は, 必ずしもこれらの情報のすべてに反応しているわけではなく, 何らかの基準に従って情報を取捨選択し, 統合し, あるいは再解釈していると考えられる.美的特性により好意的な態度を形成しているか, 実用的特性により好意的な態度を形成しているかという心の基準も, 消費者がよりよく衣料品情報を処理するための一戦略という観点から捉えることができる.それではこのような戦略の相違は, 衣料品に対する購買行動や行動成果のあり方をどのように規定しているであろうか.本研究で得られた結果は, 次のように要約できる.
(1) 美的な特性と実用的な特性のいずれに, より好意的な“心の構え”を形成しているか (いずれのヒューリスティックスを採用しているか) で, 衣料品に対する購買態度や行動に相違があった.
(2) 美的な特性と実用的な特性のいずれに, より好意的な“心の構え”を形成しているかで, 衣料品から受ける心理的な利益を異にした.
(3) 衣料品からもたらされる心理的な利益の相違によって, 自己イメージや被服に対する自我関与の度合も変化すると推察された.
(4) すなわち衣料品に対する“心の構え”の相違が, それに引続く購買行動や行動成果のあり方を規定し, またそこで生じた成果は逆に, 一定の“心の構え”を強化ないし変容させると推察された.
(5) 以上より, 衣料品の情報処理過程のモデル (図1) を確認するための一資料を得た.
なお本研究は, 昭和61年度, 日本家政学会第38回大会において発表した.
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