尿素系, メラミン系, グリオキザール系三種の熱硬化性樹脂を用い, 樹脂加工の熱処理時における樹脂相互間及び樹脂とセルロース分子間の反応機構を, 反応基の化学的結合の面からとその反応の進行を反映する硬化挙動およびそれに伴う防しわ性の向上という物理的見地との両面から把握することを試みたが, その結果, いずれの樹脂加工布においても反応に伴って発生するホルムアルデヒド (以下HCHOとする) の増加と共に動的粘弾性の測定から求めた剛性率および防しわ性は増加し, 樹脂のメチロール基間の重縮合反応, 樹脂とセルロース分子間の橋かけ反応の進行に伴って樹脂の硬化が進行することが定量的に認められた.しかし, 両方法によって求めたみかけの活性化エネルギーはいずれの樹脂加工布においてもHCHOの発生量から求めたほうが大きい値を示した.それは水 (以下H
2O) の発生量を無視したことに起因すると考え, 今回はそれを考慮して検討した結果, 物理的に剛性率から求めたものと非常によく一致することが認められ, 樹脂の硬化挙動はHCHOとH
2O両者を発生する反応全体を総合的に反映したものであり, 化学的見地から測定した化学反応の挙動と, それを反映する物理的見地から観察した力学的挙動とは極めてよく一致するということが実験的に立証された.
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