スーッ地の縫目スリップにおよぼす布の構造および力学特性の影響を検討した.
(1) 縫目に直交する方向の糸密度およびカバーファクターが, 大きいほど縫目スリップは小さく, これは, 縫目角度にほとんど依存しない.
(2) 縫目スリップは, 布の基本力学特性の中で, せん断特性との関連が強く, せん断剛性の大きいものほど, スリップが小さく, 同一せん断剛性レベルでは, 平織より, 朱子織の方が大きく, 綾織はその中間に値する.
(3) 縫目スリップ量Sと, せん断剛性G, 2HG, 2HG5とは何れも指数関数で関連づけられ, 縫目スリップを, これらの特性から予測する式を織物組織別に導いた.ただし, 予測式は, 縫目数5目/cmの縫目で, 引張荷重12kg/2.5cmの場合に適用される.
(4) 糸軸にそった縫目については, 縫目を含む布の伸びと含まない布の伸びとの差と, 縫目スリップとの間に直線関係がみられることから, 布と縫目のある布の伸長特性と, 縫糸の伸長特性から縫目スリップを予測する手掛りが得られた.
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