縫糸の種類の違いによる撚移動の影響を調べるため, 現在市販されている主な縫糸について, 1本針本縫ミシンで前進縫および後進縫を行い, それぞれ糸道上の糸の撚数と強度および可縫長を測定して比較した.また, 後進縫での可縫性の改善策について, ミシン針へ縫糸をS字状にまわして通す, 針取り付け角度の変更, およびS撚の縫糸を使用して実験した結果, つぎのことがわかった.
1) Z撚の縫糸を使用した後進縫では, 撚数残存率, 強度残存率, 可縫長の結果を総合して適性をみると, フィラメント系縫糸<スパン系縫糸<コアスパン縫糸の順となった.
2) Z撚の縫糸を使用した後進縫での糸切れは, ループの糸割れのところにかまの剣先が入って糸切れになる場合もみられた.
3) ミシン針に縫糸をS字状にまわして通すことにより撚移動を減少させ可縫長を増加させることができた.
4) 撚数の変化により, ミシン針にできる縫糸のループ面が傾く.そこで, このループ面がかまの剣先の方向と直角になるようにミシン針の取り付け角度を変えることにより, 可縫長を増加させることができた.
5) ミシン針の取り付け角度を変え, さらにS字状にまわして通すことにより, 連続後進縫での可縫長を著しく増加させることができた.
6) 連続後進縫にはS撚の縫糸が適している.これはS撚の縫糸が, 針のEdgeと縫糸との交叉において, Edge Effectの影響を受けにくい撚角度をもつことによる.
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