ポリエステル繊維の難燃化に対するプロム (Br) とリン (P) の影響に関する一連の研究の一つとして, 今回はBrとPの化合物で処理したPET布の熱分析的観察に焦点をあて, 未加工布との関連においてBr, P両者併用の影響がPET繊維の熱分解の過程において熱分解挙動にどのように又どの程度反映するかを検討した.
その結果は次のように要約される.
ガラス転移点 (Tg) , 結晶化温度 (Tc) , 結晶化ポリマーの融点 (Tm
2) はBrとPの含有量の増加に伴ってかなりの低下を示した.特に両者の相乗効果を示すものにはより大きな低下がみられた.このようなTg, Tc, Tm
2とBrとPの含有量との関係をLOIの増加とBr, Pの含有量との関係と比較すると, Br, P, Br+Pの含有量が高ければ高い程, Tg, Tc, Tm
2の低下は大きく又LOI値は増加するという傾向がいずれの試料にもみられた.
さらにBrとPの添加は結晶化熱および結晶化ポリマーの融解熱にも影響を及ぼすことが示された.一方, TG曲線はPET繊維の熱分解挙動に対するBr, Pおよび両者併用の場合の影響に関する情報を与えた.すなわち, Brおよび/又はPの取り込みにより熱分解開始温度のかなりの低下がみとめられた.熱分解後に残留する「残さ」もBrとPの添加により増加し, 両者を併用した相乗効果を示すものではさらに増加を示した.
結論として, 今回行った熱分析的観察の結果はPET繊維に対して化学的処理により付着させたBrとPの化合物は, 熱処理により十分PET分子間に取り込まれ, PETポリマーのガラス転移, 結晶化および結晶化ポリマーの融解に関与していることを示唆する.
さらに, BrとPの相乗効果は, 熱分解挙動および熱的性質に反映している.
上記の結果からPのみでなく気相においてラジカル封鎖剤としてよく知られているBrも固相においても働いてPET繊維の難燃化に寄与することが推察される.
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