アニリン→2-ナフトール, アニリン→ナフトールAS-BO, アニリン→ナフトールASおよび4-ニトロアニリン→2-ナフトールからそれぞれ合成したナフトール染料4種を, 次亜塩素酸ナトリウムにより, 室温下, ジクロロメタンと水の二層系を用いて酸化分解した.分解物はHPLC, GCにより分析し, またそれらの構造はGC-MS, NMR, IRにより解析した.その結果次の事項が明らかとなった.
1.弱酸性下では, 染料の分解は著しく促進され, 逆にアルカリ性下では染料は比較的安定であった.2.酸化分解によって染料中のアゾ基の開裂が起き多くの分解物が生じた.たとえば, アニリン→2-ナフトールでは9種, 4一ニトロアニリン→2-ナフトールでは5種の分解物が生成した.これらはいずれもマススペクトル, NMRおよび標準物質との比較から構造を決定した.特に, 分解物の一つである塩素置換フェノールやナフトール類はもし衣服に残存するようなことがあれば, 皮膚障害を引き起こす原因となることが危惧された.
3.分解物からみて, 分解の機構は比較的酸性条件下での酸化では, まずベンゼン環またはナフタレン環に対する親電子的な塩素化, および塩素化脱ジアゾニウム反応を受け, その後, 分解物がさらに塩素化を受けたり, 生成したジアゾニウム塩の分解やラジカル的カップリングが起き, 多様な生成物が生じると推定した.
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