近年, 渦巻式電気洗濯機に代わって家庭用電気洗濯機の主流になってきた家庭用新水流式電気洗濯機について, 浴量, 浴比, 時間, 回転翼の回転プログラム等を変えて洗浄を行い, 洗浄のために消費された機械エネルギーを熱量法により求め, 機械エネルギーと洗浄率ならびに布の損傷との関係を検討し, 渦巻式洗濯機との相違を明確にするとともに, その原因を検討した.結果は次の通りである.
1) 布を加えることにより増加した機械エネルギー (エネルギー増分) が, 布に加えられた機械エネルギーに相当するものと仮定した場合, 単位布質量当たりのエネルギー増分すなわち単位質量当たりの布に加えられたエネルギーは, 浴量によらず単位浴量当たりの布質量 (浴比) によって定まり, 布質量の増加にともない0.02kg/l付近の極大を経て減少する.そして, その値は全般的に渦巻式洗濯機より低い.
布への機械エネルギーの伝達は, 渦巻式洗濯機では専ら渦巻流によっているが, 新水流式洗濯機では, そのほかに回転翼の急速反転によって行われる.
2) 洗浄率と単位布質量当たりのエネルギー増分の対数の間には, 浴量, 浴比, 洗浄時間によらず一つの直線関係が認められ, 本実験条件範囲では, 同一エネルギー増分における洗浄率は渦巻式洗濯機より高い傾向にある.これは, 回転翼の急速反転時の布の部分的変形に基づく効果と考察した.
3) 布のほつれと単位布質量当たりのエネルギー増分の平方根の間には, 直線関係が認められ, 渦巻式洗濯機よりほつれが大きい傾向にあるが, 浴比により布質量0.07kg/l未満と, 渦巻式洗濯機と同程度のより少ないほつれを示す布質量0.07kg/l以上の2つの直線に層別される.これは, 布の部分的変形に基づく効果が, 汚れの除去には比較的小さな範囲内の変形で現れるのに対し, ほつれのように糸の移動をともなう場合には, 比較的大きな規模の変形で現れ, 低浴比では急速反転時の比較的規模の大きい変形が抑制されるためと考察した.
ウールのフェルト収縮率も新水流式洗濯機で高くなる傾向が認められた.
4) 洗浄率とほつれの対数の間には, 浴比によって層別される直線関係が認められ, 布質量0.07kg/l未満では同一洗浄率におけるほつれが渦巻式洗濯機より高い.
5) 以上のように新水流式洗濯機の特徴は, 回転翼の急速反転時のエネルギー伝達とその際の布の部分的変形に基づくものであるといえよう.
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