本研究はすくい縫いミシン縫製において, 縫製条件や生地物性がすくい量とその強度およびシーム強度などのシーム特性とどのように関係しているかについて実験, 検討したものである.結果は, 次に示す通りである.
1) すくい量は, 縫製条件や生地性状の影響を大きく受ける.これらの間の定量的な関係について明らかにする目的で, すくい量の平均値を目的変数として重回帰分析を行った.すくい量には, 布上げの高さの影響が最も大きく, 布厚さ, カバーファクター, 平面重, 曲げ剛性などの生地特性が有意に寄与していることがわかった.
2) すくい部の強度は, すくい量と正の相関があると予想され, その分布は正規分布, 厳密にはワイブル分布に近似できることがわかった.
3) 地糸が破壊する場合のすくい縫いシームの破壊形態は, 本縫いシームの破壊形態とは異なっている.しかし, シームにおいて1つめのすくい部の破壊が起こる時点の強度については, 従来からの最小強度の理論式がある程度適用できる.
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