現在, 私たちは, いわゆる情報化社会の中で生活している.従って, 教育の分野においては, 情報処理の方法と情報にかかわる教育機器の使用法を学ぶことが重要である.かつては情報は数と文字の符号を意味していたが, 最近, 色や図が同様に情報処理の重要な要素としてみなされるようになった.特に, これらの視覚要素は, 被服デザインの分野において欠くことのできないものである.そこで, この分野に有効なコンピュータ支援による教材を提案する.
まず, はじめにコンピュータ支援システムを開発し, 「被服デザインの基礎」と命名した.そのシステムは, 学習コースと感覚テストから成る.次にシステムの効果を評価するために, コンピュータ支援システムと同じ内容の教科書を作成し, 2つの異なったシステムの学習効果を比較した.被験者として女子学生を2グループに分けた.一方はコンピュータ使用グループ, もう一方は教科書使用グループである.学習効果の評価は, アンケート調査および感覚テストで行った.
その結果, 次のことが明らかになった. (1) コンピュータ支援システムは, リアルタイムで線を描いたり, 色を塗る機能を備えているためビジュアルなデザイン原理の学習には教科書より効果的であった.しかし, コンピュータ使用グループは, 学習が長時間になったため, 疲れを感じ集中力が低下した. (2) 2つのグループのテスト得点の平均には有意差はみられなかったが, 得点の分散がコンピュータ使用グループの方が小さかった. (3) 数量化III類による感覚テストの分析では, コンピュータを使用した学習者は疲れると不注意による誤りをすることが明らかになった.
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