超・長繊維綿を中心にした差別化原綿の市場実態と生活者の意識調査の結果は次のように要約される.
(1) 市場には超・長繊維綿を示す原綿の表示が増え, エジプト綿, 海島綿, スーピマ綿, トルファン綿などがみられた.そのうち最も多くみられたのはエジプト綿であった.超・長繊維綿の表示のあるものを18件サンプリングし, 繊維長を測定した結果, 今回のサンプルについては, いずれも繊維長が1.10インチ以上有り, 超・長繊維綿が使用されているといえた.ただし, 「エジプト綿」のように, 超長綿と長繊維綿の2つの品質のランクを含む場合, 現在の表示からは購入時に品質判断をすることはできなかった.
(2) 現在市場にみられる差別化綿の中で, 知名度が高かったのは, エジプト綿, インド綿, 海島綿, 中国綿などで, そのうち高級綿として認識されていたのは, エジプト綿と海島綿であった.こういった差別化綿を使用したことのある人は全体の7割に及び, 差別化綿に関する知識と関心はそれほど高くないにも関わらず, これらの商品は, 既に生活の中に浸透しているといえた.
(3) エジプト綿の表示の問題を生活者の側から明らかにするため, 繊維長が超長綿に近いエジプト綿と, 中長繊維綿に近いエジプト綿を使用した商品の表示例を示し, 表示を読んだ印象から品質の優劣を判断させた.商品に関する知識が十分でない場合, 生活者は表示の内容を信頼し, 表示のイメージが良くインパクトの強いものほど, 品質の評価は高くなった.このような, 誤解を招く表示は生活者にとって明らかに不利益であり, 「不当景品類及び不当表示防止法」第4条1号に触れる恐れがあるといえる.
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