本研究はキルティング布の構成条件が, その布特性に与える影響について実験, 検討したものである。得られた結果は次の通りである.
1) キルティング布の保温率は, 中綿の重ね枚数, ステッチ線間隔の増加によって高くなる.さらに, サーモグラフィーによりキルティング布の表面温度を観察した結果, 特にステッチ線部分からの放熱が顕著であることが明らかになり, 重ね枚数の影響を含めて保温率の変化傾向が裏付けられた.
2) 透湿性については, ステッチ線間隔が大きくなり中綿の重ね枚数が増すにつれて減少した.キルティング布におけるステッチ線の存在は透湿率を増加させる傾向をもつ.
3) キルティング布の平均厚さを重要な因子と考え, 保温性及び透湿性について検討した結果, 平均厚さと保温率, 透湿率の間にそれぞれ比較的きれいな関係がみられた.キルティング布の表布地, 中綿が同一であれば, 平均厚さを把握することによりこれらの特性をある程度推定できる.
4) キルティング布の保温性に関しては, 熱抵抗を考えることにより, 平均厚さの重要性が理解できる.
5) キルティング布の保温率と透湿率の間にはきれいな負の直線関係が成立し, キルティング布における熱拡散挙動と水分拡散挙動は類似していることが実験的に確かめられた.
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