本報はジャケット着用者の個々のゆとり量に注目し, パターン寸法と, それに対応する人体寸法との差をゆとり量として捉え, 官能量との係わりについて検討した.着用官能評価別にゆとり量の箱ひげ図を作成して, セミフィットタイプジャケットの快適ゆとり量を把握した.また, 判別分析を行い, フィット性や運動機能性の良いジャケットを予測するための部位を抽出し, 判別関数を求めた.官能量を相対評価として求めたため全般にゆとり量のバラツキは大きかったが, 結果は次の通りである.
1) 身幅, AH幅, 脇幅, AH, 袖幅は評価層別のゆとり量平均値間に1%または5%の有意水準で差が見られ, ゆとり量が大となるほど静立時, 動作時の着用官能評価は順次高くなる結果を示した.
2) 胸幅のみは他の項目と唯一反対の評価の方向性を示し, ゆとり量がある範囲で小さくなると着心地の良い評価を得た.1) , 2) は前報のパターン寸法の大小と官能量との関係と同一傾向を示した.
3) 判別分析の結果, 複数の説明変数を用いて67~81%の判別率で評価の予測が可能となり, 身幅, AH幅のゆとり量が小であると着用評価は低くなり, 判別に大いに関与する部位である事が判明した.
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