奈良東大寺二月堂, 修二会の儀式の中で, 手漉き和紙の紙衣が使用されている.現在, この紙衣の材料である手漉き和紙を漉いている所は, 全国でもほんの僅かとなった.そこで, 現在使用されている手漉き和紙の特徴を調べるとともに, 後継者が少なくなっている手漉き和紙に代わって, 機械漉き紙や不織布を手漉き和紙に代えることができるのか, 実際にこれらの材料を利用して, 紙衣を試作し検討を加えてみた.
その結果, 次の様なことが分かった.
1.機械漉き紙, 不織布 (湿式レーヨンスパンボンド布) は強力が手漉き和紙よりも劣る.
2.燃焼性は, 防炎加工を施すことにより安全性を確保することができる.
3.不織布の保温性は, 裏地に晒し木綿を付けて仕上げることにより, 手漉き和紙と同等の保温性を得ることが出来る.
以上のことから材料の強力に改良を加えることにより, 手漉き和紙以外のものでも紙衣の材料として使用可能であることが分かった.
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