染色堅牢性における変退色評価は, 染色布の色は無数に存在し, その変退色方向も種々であるにもかかわらず, 中色の灰色を基準とした明度変化のみで構成されている変退色用グレースケールを用いて視感で行わなければならない.したがって, ある程度のばらつきは避けられない.そこで, 視感評価をする場合, 変退色用グレースケールを, 有彩色に対して, また, 色相, 明度, 彩度の変化方向に対してどのように適応しているのか, 系統的な試料を作製し検討した.
また, 測色機器が発達してきた現在, 色相や変退色の変化方向にかかわらず, 視感評価値と良好に対応する計測堅牢度評価値が望まれている.そこで, これまでに提案されている測色値 (X, Y, Z) から計算できる色差値および堅牢度値と上記の視感評価値とを比較検討を行った.その結果, CIE94 (1: 1) は, 他の計測評価値より視感評価値と高い相関が得られた.そのCIE94 (1: 1) の色差式を用い, 変退色用グレースケールの等級値に対応した等色差ラインを色立体中に描くことにより, 色立体中での変退色用グレースケールの適用の仕方を大まかに知ることが出来た.
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