内部反射エレメント (internal reflection element, IRE) 上に溶液を滴下して溶媒を揮発させる手法を用いた減衰全反射 (attenuated total reflection, ATR) /FT-IR法により, ヘキサン溶液中のエステル結合を含む油性物質 (トリグリセリドやワックスなど) 及び脂肪酸の定量を試みた.トリオレインとオレイン酸の分析では, IRE上の試料量が0.5-5μgにおいて, トリオレインでは1745cm
-1, オレイン酸では1710cm
-1近のピークの吸光度により定量が可能であった.人体由来の汚れにはこれらの吸収に影響を与える多くの物質が存在するが, オレイン酸で作成した検量線を用いて人体由来の汚れに含まれる脂肪酸の定量が可能であった.また, トリオレイン及びオレイン酸の定量においてスクワレンなど少量の妨害物質の影響は無視できた.6ヶ月間着用した肌シャツのヘキサン抽出液に含まれる油性物質の定量について, ATR/FT-IR分析と重量分析を比較した.その結果, エステル結合を含む油性物質の定量に, 65%トリオレインと35%パルミチン酸n-ヘキサデシルの混合物で作成した検量線を用いることにより, 重量分析とATR/FT-IR法による定量値がほぼ一致した.以上のことから, 本法を用いて, 迅速, 簡便に人体由来の汚れに存在するエステル結合を含む油性物質と脂肪酸の定量が可能であることがわかった.
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