たまねぎ外皮で染色し金属媒染した羊毛布について, 洗濯堅牢性に及ぼす洗剤の影響を調べた.洗剤には, 各種JIS洗剤, 各種市販洗剤, および洗剤の主要な成分として界面活性剤または金属イオン封鎖剤を使用した.その結果, 洗濯後の染色布には色相変化が見られ, 変退色の程度は媒染剤の有無・種類と洗剤によって異なること, また, 界面活性剤よりも金属イオン封鎖剤の寄与が大きいことがわかった.
さらに, たまねぎ外皮含有色素クエルセチンの溶液に媒染剤金属や洗剤成分を添加して, 紫外可視吸収スペクトルの変化を調べた.その結果, クエルセチンと金属を含む溶液は, 可視領域にクエルセチン+金属錯体に由来する吸収を示した.さらに洗剤成分を添加すると, 金属イオン封鎖剤添加の場合に, 色素+金属錯体に由来する吸収がほぼ消失した.このことから, 染色布における変退色の原因のひとつとして, 金属イオン封鎖剤による媒染剤金属の捕捉が推測された.
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