衣服設計を目的とした人体の形態計測では, 上肢または上肢と体幹部の関係について検討されていないことから, 本研究ではそれらについて計測し, 袖パターン設計論の構築に寄与することを目的とした.20歳代成人女子92名の正投影図に近い状態を撮影した立位正常姿勢の写真を用い, 袖パターン構成理論に必要とする計測項目を含めて上肢・体幹部の形態計測を行い, 主成分分析を行った.結果は次の通りである.
1) 計測結果から, 前面視における上肢外側線傾斜角度は平均約+3度の傾斜を持っていることが明らかになり, 袖立体は垂下状態に着けるのが良いと一般的に考えられているが, 体型によってやや外転した状態にする必要があると実験的に証明できた.
2) 主成分分析の結果から, 負荷量|0.5|以上でみると上肢外側線接線と肩先点との水平距離は肥痩を示す項目と同一主成分に表れ, 同時に項目数を減じた第二段階分析では上肢外側線傾斜角度とも同一主成分として表れた.また肩先点位と腰部の幅径差も上肢外側線傾斜角度と同一主成分に表れ, これらは衣服設計に活用できると考えた.側面視の前肩度と上腕部の振れ角度が, また上半身体軸傾斜角度と上肢の振れ角度がそれぞれ同一主成分に表れた.これらは先行研究を補う袖パターン作図に有効なデータと考えられる.
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