有害な紫外線からの肌の保護を目的として, 布と染料の特性が紫外線遮蔽性能に及ぼす影響について検討した.本報では赤系, 青系, 黄系の構造の異なる8種類の分散染料を用いてポリエステル布を染色し, 染料の紫外波長域におけるモル吸収が紫外線遮蔽性能*に及ぼす影響について明らかにし, あわせてポリエステル布上の分散染料による着色効果とUPF (紫外線防護係数**) の関係について, 綿布上の直接染料と比較することによって考察した.結果は次の通りであった.
1) ポリエステル白布は綿白布より高い紫外線遮蔽性能を持ち, また, UVAよりUVB波長域で紫外線遮蔽性能に優れていた.したがって, UVA域で高いモル吸光係数を持つ染料による染色はポリエステルに有効な紫外線遮蔽性能を与えるであろう.
2) 分散染料のYellow3はUVAのみならず, UVB波長域においてもモル吸光係数が高かった.
3) 黄系の染料は, 濃色においても高い視感反射率を持ち, かつ紫外線遮蔽性能に優れていた.
4) 紫外線遮蔽率をUPFで示すとすれば, 遮蔽率90%はUPF30に相当するであろう.
*試料の紫外線遮蔽性能は紫外線域での試料の透過率の関数として示される.
**試料のUPFは紫外域での透過率と太陽光での皮膚への紅斑作用を加味した関数として表される.
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