パンツ設計のための基礎的データを得る目的で, 69名の若年成人女子 (19~23歳) を対象として, 立位および座位姿勢のもとで下半身17項目に身長, 体重を加えた合計19項目の計測を行い, 立位から座位に姿勢変化した場合の寸法変化について検討を加えた.
立位と座位姿勢の間で, ウエスト, 大腿最大囲, W.L.~外果, 腹囲, ヒップ, W.L.~膝蓋骨中点, W.L.~膝窩の各項目は, いずれも両姿勢における計測値間に有意な相関関係が認められるが, 後者の2項目に関しては, 相関係数が余り高いとはいえなかった.またこれらの計測項目の中で, 姿勢による寸法変化傾向が比較的明瞭だったのは, W.L.~膝窩, W.L.~膝蓋骨中点, ヒップであった.この三項目については, 両姿勢間の変化傾向を, 体型を反映する主成分得点やBMIとの観点から検討したが, 明瞭な関係を見いだすことはできなかった.
W.L.~膝窩 (座位) とヒップ (座位) の2変数は, パンツ設計上重要な変数であるため, この両変数を目的変数として正準相関分析を行った.この結果からW.L.~膝窩 (座位) は, 立位のW.L.~膝蓋骨中点とウエストの高さとの関係が深く, ヒップ (座位) は立位のヒップ, 体重, ウエストとの関係が大きいことがわかった.
さらにW.L.~膝窩 (座位) とヒップ (座位) をそれぞれ目的変数, そして立位計測値を説明変数として重回帰分析を行った.このとき, W.L.~膝窩 (座位) とヒップ (座位) の重回帰式に取り込まれた説明変数は, 上記の正準相関分析で指摘された変数とほぼ一致した.この重回帰式によりパンツ設計において重要と考えられるW.L.~膝窩 (座位) およびヒップ (座位) の両変数については, 単相関の関係を利用して推定するよりも, はるかに精度を上げることができた.
抄録全体を表示