被服着用時の着心地の要因の一つと考えられる被服材料の放湿特性ならびに放湿機構について検討した.同一糸つかいで繊維の種類を異にする各種繊維織物を試料とし, 実際の被服着用時の条件に近い測定条件を選び実験した.すなわち, 温度30℃, 湿度81%R.H.にて試料の吸湿が平衡に達した後, 30℃, 50.9%R.H., 無風状態の条件下へ試料を移した時から時間経過に伴なう放湿量を測定した.
各試料とも放湿過程の初期において急激な放湿が認められ, その後は次第に放湿速度が減少していく.本実験条件の範囲内では, 乾燥機構でいう減率乾燥期の一部に相当するため, 放湿過程を次式で示す減率乾燥期での乾燥速度式にあてはめてみた.
dw/dt=-k (W-We) W: 時間tにおける含糧We: 時間t=∞における含糧k: 放湿速度定数
疎水性試料の場合は上式に適合するが, 親水性試料は放湿過程の初期における放湿速度定数に比較して小さい速度定数値をとる第2段階, さらに第3段階の放湿過程に移行することが実験的に認められた.
したがって, 本実験条件下での放湿挙動は被服材料の親水性, 疎水性が著しく影響し, 親水性試料ほど放湿速度定数は小さく, 放湿が平衡に近づくのに長時間を要する.しかし, 初期の放湿過程における放湿時間は試料間に大差がみられず約10分以内で, この期間においては織物構造因子が関与しているのではないかと推察される.
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