衣服の設計図である型紙は,2次元平面に描かれるため,3次元と比較して取り扱いが容易である.一方で,作成される衣服の3次元形状を型紙から想像することは困難で,試作や着装シミュレーションによって確かめるしかなかった.本論文では立体形状に関する幾何学量である「ガウスの曲率」と「平均曲率」をガウス球で視覚化する方法について検討する.すなわち,多面体のガウスの曲率である欠損角をガウス球上の領域として視覚化する.この視覚化は,直接的には「ガウスの曲率の面積への変換」を意味すること,ガウス球では平均曲率の一部についてもその情報を保持していることを明らかにする.また,成年女子を対象に,身頃の型紙原型,多面体展開図,多面体,ガウス球の事例を示す.
本研究の目的は,着装行動に対する意識について,季節感への関心度と関連づけて検討することである.日常生活の中で感じる季節感,服種別の季節適合性,着装行動に対する意識についてアンケート調査を行い,女子大学生306名から回答を得た.調査データは統計的検定,クラスター分析,因子分析により解析した.服種別の季節適合性については,上衣は季節によって使い分けるが,下衣は季節を問わずどの服種も年間を通して着用されていることが明らかになった.季節感への関心度により,被験者を関心度の高い群と,低い群に分類した.関心度の高い群は低い群に比べて,着装意識を重視する傾向がみられた.因子分析から抽出された「流行」「季節感」「自己表現」の因子については,季節感への関心度の高い群と低い群の平均因子得点間に統計的有意差があり,着装意識と季節感への関心度の間には関連性が認められた.
ガードル,スパッツなどのような身体に密着する衣服など,身体に圧力をかける衣料は多い.人体の各部位をさまざまな圧力で加圧し,加圧値と圧感覚と快適感覚との関係を検討した.被験者女性7名,加圧部位7箇所,加圧レベル10条件,加圧幅3条件で,立位姿勢で実験した.加圧は4kPaまでとした.同じ加圧値でも加圧幅が異なると有意に快適感覚値が異なる部位は,胸部,腹部,腰部,上腕,大腿であり,加圧幅が大きいと不快に感じることを把握した.同じ加圧値でも部位により圧感覚は異なり,Wilcoxon検定により有意に圧感覚値が大きい側に属する部位は,胸部,腹部,上腕,大腿であり,逆に有意に圧感覚値が小さい側に属する部位は,下腿,前腕,腰部,大腿であり,大腿は比較部位により両方に属することを把握した.また,圧感覚と快適感覚との関係においては,腰部,下腿は圧感覚値が大きく,きつく感じる加圧レベルでも,快適感覚値は変化しにくく,不快に感じにくいが,胸部,腹部,上腕は圧感覚値が大きくきつく感じると,快適感覚値は顕著に変化し不快に感じやすいことを明らかにした.すなわち,快適に感じる衣服圧設計をするためには,圧感覚の部位差だけでなく,快適感覚の部位差に留意する必要があることを明らかにした.