洗浄への炭酸水素ナトリウム(重曹)の利用に関して,インターネット上の消費者情報の実情を調査するとともに,関連事項の実験的検証を行った.インターネット上では炭酸水素ナトリウムの洗浄利用について肯定するものが大部分を占め,その洗浄力の根拠として水の軟化作用を挙げているものが多かった.洗浄試験の結果,一般の洗剤類に比べて油脂,パラフィン,カーボンブラック,酸化鉄,ヘモグロビンなどの汚れ除去性は劣り,石けんに加えた場合も石けん単独よりも洗浄力が低下するが,脂肪酸に関しては高い洗浄力を示した.炭酸水素ナトリウムは高濃度で利用することが前提なので,強いアルカリ緩衝作用によると考えられる.炭酸水素ナトリウムが水を軟化するには30~60分以上の時間を要するので実用上は関係しない.水生生物毒性は非常に低いが,洗浄へ利用する時は使用量が多いためにLCI評価で不利な結果が得られる.総合的にみて炭酸水素ナトリウムは環境配慮型の洗浄剤として高くは評価できない.