繊維製品消費科学
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53 巻, 12 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
時辞刻告
報文
  • 玄野 博行
    2012 年 53 巻 12 号 p. 974-979
    発行日: 2012/12/20
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,わが国において,持続可能な発展や商品の安全安心ニーズの高まりなど,社会が抱える諸問題の解決を求める動きに呼応して,企業の社会的責任(以下CSR: Corporate Social Responsibility)に対する関心が高まっている.このようなCSRをよりいっそう浸透させるには,独自のCSR活動に取り組むことで,企業にとって何らかの社会的評価が形成される必要がある.そこで,本稿では,CSR活動における具体的な取り組みに関する概念化として,CSR活動におけるプラットフォーム概念の適用性について考察した.その中でまずプラットフォームという概念がどのような研究分野において注目されてきたかについて言及し,それを踏まえた研究展開について見ていくことにより,CSR活動におけるプラットフォーム概念の適用性について論じている.そして,CSR活動におけるプラットフォームの事例に着目し,その有用性について考察している.その結果,CSR活動に関してどのようなプラットフォーム概念を適用するとより有効なものとなるのかが明らかになった.

  • 辻 幸恵
    2012 年 53 巻 12 号 p. 980-987
    発行日: 2012/12/20
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル オープンアクセス

    最近,我々はCorporate Social Responsibilityという言葉を新聞やテレビなどから聞くことが多くなった.そこでCorporate Social Responsibilityについて,どのようなイメージを大学生たちが持っているのかを調査した.その結果,企業の社会的責任という言葉を説明できる大学生たちは6.6%であった.大学生たちからみた社会的責任という言葉のイメージは「不正をしない」「災害時には支援をする」「環境を守る」等であった.企業の社会的責任という言葉と内容までを知っている大学生は5.0%,言葉の意味は知っているが内容までは知らない大学生たちは12.5%,聞いたことがあるが言葉の意味まで知らない大学生たちは33.0%,知らない大学生たちは49.5%となった.大学生たちは「医療・化粧品」産業に対して「価値ある製品・サービスの提供」や「社会的活動」を望むことがわかった.逆に「商社」に対してはあまり望むことはない結果となった.これらの結果から考えられることは,我々は企業の社会的責任を教育機関で教育する必要があることである.そして,学生たちは社会的責任を身近なところから実践できるように,具体的事例を企業から多く学ぶべきである.若者たちは社会的責任を考える必要がある.なぜならば,彼らは消費者であると同時に,将来は企業に属する人間だからである.

  • ―アパレル産業について―
    松尾 繁
    2012 年 53 巻 12 号 p. 988-998
    発行日: 2012/12/20
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル オープンアクセス

    衣服を製造・販売する企業の社会的責任は,第二次世界大戦後のモノ不足時代には品質の確かな製品を市場に供給することであったが,商品が豊富に出回るようになった今日,消費者が要求する製品を適切に選択・購入できるように,適正な商品情報を提供することに変わってきている.
    消費者が要求する品質は消費科学によって探求される.また一方,適正な商品情報を提供するために消費者問題関連法規を順守するコンプライアンス経営が企業に求められる.

  • 栃尾 安伸
    2012 年 53 巻 12 号 p. 999-1003
    発行日: 2012/12/20
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル オープンアクセス

    本論では,企業がなぜ経験者ではなく,新人を採用するのか,という問題を取り上げる.本論では,この問題についての労働経済学の研究をレビューしたうえで,この問題について研究方法についての新たな枠組みの提示を行う.

  • 宮部 直明, 辻 峰男
    2012 年 53 巻 12 号 p. 1004-1009
    発行日: 2012/12/20
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,連結の範囲に関する連結会計制度を粉飾防止の観点から検証し,その今日的な意義を再検討することを目的とする.粉飾の様態のうち,連結財務諸表ないし企業集団に関係する事例の場合,粉飾規模が大きくなりうる.
    連結会計制度が確立された直接的な理由のひとつに粉飾決算の防止があった.当初の会計基準では,連結会社相互間の取引高の相殺消去等が規定されたものの,連結の範囲は持株基準により,粉飾の余地が残された.その後,支配力基準に変更となり連結の範囲は拡大された.金融商品の時価評価と合わせて,粉飾の余地を減らす会計の整備であった.他方,これらの新しい会計基準は業績の良くない企業にとっては不都合な規制であって,オリンパス株式会社は,連結の対象とはならないファンドを用いて,損失を含む金融商品を帳簿価額で切り離す「飛ばし」という損失分離スキームを策定した.さらに損失分離解消スキームによって,企業買収案件に他社の株式や資産を取得する際に,損失分離スキームにおいて分離した損失分を当該資産の価値に上乗せしたり,取得アドバイザーに多額の報酬を支払うことにより,その上乗せ分や報酬額をのれん等の資産に計上し,その後,会計上の償却期間にわたって段階的に償却し費用計上する方法が策定されている.
    会社に準ずる事業体を連結の範囲に含めることは粉飾を防止する一助となりえたし,のれんの規則的な償却を再考する課題を提示した.国際的なコンバージェンスの促進と各国の事例の相互理解が粉飾を防止するうえで有効である.

  • 藤林 宗晃, 辻 峰男
    2012 年 53 巻 12 号 p. 1010-1016
    発行日: 2012/12/20
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,引当金会計をとりあげ,中小企業が事業活動を継続しながらも環境保全を可能とするような会計制度の構築を提言することを研究の目的とする.会計制度において,公正処理基準および債務確定基準からみると,以前よりも緊密となった会社法と会計基準との関係に対し,特に中小企業の場合,依然として会社法会計は法人税法の影響を受けており,中小企業会計要領の新設が示すように実務における法人税法の規定は重要である.
    グローバルなコンバージェンスが進展する大企業は,会計実務において,基準が発効した資産除去債務のほか,環境関連項目を含む引当金の計上が増加している.他方,中小企業は,法人税法の引当金損金算入規定の廃止もあって,もともとの非実務性が変化していないようである.有害物質を含む有形固定資産の除却を促進するためにはそれを可能とする資金の裏付けが必要であり,ここに,関係する会計制度ないし会計基準を改正する余地がある.判例はこれを阻害してはいない.
    持続性のある社会の構成員であるという点で,環境を保全する義務に企業の規模は関係がない.中小企業であるがゆえに水準の高いコーポレート・ガバナンスを構築し,適正な財務諸表・計算書類を作成することが,ステークホルダーに有用であることを経営者は自覚すべきである.

  • 圓丸 哲麻
    2012 年 53 巻 12 号 p. 1017-1023
    発行日: 2012/12/20
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル オープンアクセス

    消費者が求める基本的・本質的企業責任とは,そもそも「公正な取引に努めること」であったはずだが,近年では,自身の立場に関係なく,複合的,包括的な「責任」が社会全般として求められるようになってきた.
    この関心の高まりと共にCSRに関する指標が誕生はしているものの,しかしながらそれらのどの指標も,消費者が求める,また認識する「企業責任」を示すものではない.
    そこで本研究では,消費者求めるCSRの指標を検討すべく,まず消費者が認識する「企業責任」を,マーケテイングの基本命題である「顧客満足」との関係から考察する.

  • ―日韓比較を中心に―
    安 常希
    2012 年 53 巻 12 号 p. 1024-1031
    発行日: 2012/12/20
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,衣類商品のインターネット(以下,インターネットをeと表記)ショッピングにおける消費者の知覚リスクに関する先行研究を踏まえて,衣類商品e購買態度形成モデルを提案し,日韓両国の消費者アンケート調査に基づいてモデルの妥当性を比較・検証したものである.その結果,日韓両国とも衣類商品のe購買態度形成に最もネガティブな影響を与えている知覚リスク因子は美的・感覚的要素に関するリスクであること,情報収集志向や購買能力といった消費者の内的要因が衣類商品eショッピングにおける好意的な購買態度形成に寄与していることが明らかになった.また,日韓比較においては,両国の衣類購買e態度形成モデルの構造には類似性があることが分かった.しかし,韓国の消費者は衣類関与が高いほど好意的なe購買態度を形成しているが,日本の消費者にはこうした関連性がみられないといった相違点も明らかになった.

  • ―その歴史的考察―
    平松 隆円
    2012 年 53 巻 12 号 p. 1032-1037
    発行日: 2012/12/20
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル オープンアクセス

    化粧は,身体に直接施すものであるため,その使用が各種のアレルギーなどを誘発する可能性がある.歴史的に,消費者は化粧の使用により鉛中毒や黒皮症に冒されたりしてきた.その時々で,企業の経済活動が優先され,また情報提供や注意喚起の稚拙さの問題が生じた.企業は,どのように消費者や社会と関わり,経済活動をおこなうべきなのか.また,消費者は企業の提供する製品や情報を,どのように受け止めていくべきか.本研究では,化粧品による鉛中毒と黒皮症の事例を取り上げ考察した.

  • 梅村 修
    2012 年 53 巻 12 号 p. 1038-1043
    発行日: 2012/12/20
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿の目的は,近年,盛んに使われるようになった「顧客心理型コピー」の伝播力を測定し,その効果を実証的に明らかにすることである.とくに,「顧客心理型コピー」のうち,表現形式上,生の「つぶやき」の体裁を装っている「つぶやき型コピー」と,内言を言語化した「内言型コピー」との伝播力の差異を明らかにしたい.本調査では,文章表現コンクールの作品応募キャンペーンにからめて,過去の顧客心理型のキャッチコピー(文字主体のポスター)を大学構内の掲示板等に貼りめぐらし,学内の教職員・学生がQRコードから投稿できる仕組みを構築した.結果は,「顧客心理型コピー」に触発されて応募された全作品82件のすべてが「内言型コピー」であった.すなわち「つぶやき型コピー」に有意な伝播力は,まったく見出されず,消費者の胸の内を代弁したり,説明したりする,技巧的な「内言型コピー」の伝播力が優っていることが明らかになった.

  • 髙橋 広行, 豊田 尚吾
    2012 年 53 巻 12 号 p. 1044-1052
    発行日: 2012/12/20
    公開日: 2017/05/30
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は,震災復興支援,貧困支援,環境保護などの倫理的消費商品の購買と消費者の心理的側面との関係性をつまびらかにすることにある.具体的なアプローチは,倫理的消費商品の購買状況と価値観や社会的規範との関連性について,性・世代・地域の違いを踏まえ,アンケートデータの分析を通じて明らかにするものである.分析には,大阪ガス株式会社エネルギー・文化研究所が2012年2月に,20代から60代の男女5000人に対して行ったアンケート調査データを用いた.分析の結果,倫理的消費商品の購入には,消費者個人の価値観とともに社会的規範が大きく影響すること,特に,高年者世代ほど倫理的消費に対する意識が強いことがわかった.従来のマーケティング戦略において見落としてきた「規範」という概念の重要性,および,今後の主なターゲット層となりうる女性の高年者世代が倫理的消費に大きく関連するという点を明らかにしたことが本研究の貢献である.

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