現在我が国は,高齢化社会さらに高齢社会を超えて,極端に高齢者割合が高い超高齢社会を迎えている.高齢者が増えるに伴って解決しなければならない様々な問題が生じているが,中でも衣服に関係する問題は身近で重要である.しかし,高齢者の衣服に関する研究は少ない.そこで,本報告では,直接身体に触れて身体保護,衛生維持などの機能をもつ肌着に注目し,肌着に対する高齢者の意識を明らかにすることを目的とした聞き取り調査を行った.その結果,洗濯や衣服整理などの肌着の利便性に関して女性の方が男性よりも高い意識のあることがわかった.また,尿失禁,加齢臭,購買行動障害などの高齢者特有の問題があることもわかった.さらに,高齢者も若者と同様にファッションやスタイルに対して強い興味をもっていることがわかった.
フィールド実験により,乳がん術後女性の衣服内気候について検討した.被験者は術後者4名(片側乳房全摘2名,乳房温存2名)および健常者4名とした.術後者では術側と健側,健常者では右側と左側のブラジャー(およびパッド)内の温湿度を10秒毎に60分間測定した.衣服内温度は,いずれの術後者も術側の方が高い値を示した.その理由として,乳房全摘術後者が装着しているシリコンパッドの影響,乳房温存手術後の放射線照射に起因する発汗機能の損失が影響している可能性,の2つが考えられる.シリコンパッド内は湿度もきわめて高い値を示した.これらの結果から,乳がん術後者の着衣における温熱生理的不快の大きさが示唆される.