一般に,防水性素材は縫製加工によって縫い目部の防水性が低下する.本研究は,縫製条件が防水性に及ぼす影響と消費過程による防水性能低下の防止方法について検討したものである.
縫い目を有する試料を用いた雨試験と耐水度試験の結果は,モデル実験の結果と同様,ミシン針は細く,縫い糸は見かけの太さが太いほど防水効果は高いことを示した.実験において,縫い糸の撥水加工は極めて効果的であった.
また,縫い目に疲労作用が加わると防水性は著しく低下するが,疲労に対して耐久的な防水性を得るには,疲労を与える前の防水性能をできるだけ高い水準にもっていくことが必要であった.
モデル実験,雨試験,耐水度試験の結果を踏まえ,縫い目に耐久的な防水性を与えるための方策を検討した.その結果,表3 のc-1~2,5,d-1~2,e-2 のような撥水加工したテクスチャード糸やポリウレタン樹脂を用いて針穴を充填する方法によって大きな防水効果が得られた.
本研究では,基材として合成皮革とPVCレザーを用い,既知で異なった風合いを有する3種の改質剤とポリウレタン樹脂溶液,および艶消し剤で構成された4種の表面処理剤を調製し,これらを基材に塗工後乾燥し,表面摩擦特性の測定と解析を行った.
その結果,KES-FB4に,人間の指を想定した凸凹が施されたシリコーンゴム製摩擦子を取り付けた表面摩擦特性の測定結果では,それぞれの値から,各風合い改質剤の持つ特徴的な風合いと,PVC レザーに配合された可塑剤による風合い変化を捉えることが出来る可能性のあることが確認でき,使用用途に応じて異なった風合いに仕上げられ商品化される天然皮革や皮革に類するものの表面の風合いが,今後,数値化出来る可能性を有していることを示した.
さらに,学生による触感評価では,風合い触感における変位の絶対値がある程度の大きさを有する場合,熟練者による触感判定評価で行われてきた風合い評価に近似した結果が得られることを確認できた.
布の摩耗による傷みにおいて,色の傷み指標である色差E*abが1.5 に達する傷みの速さと,布の性能との関係を調べた.用いた試料布は,平織りで綿を主素材とする22 種類の布と麻布1種である.試料布それぞれに摩耗程度の異なる6 種類の摩耗布を作製した.原布とそれぞれの摩耗布との色差を求め,摩擦回数との関係を調べた結果,原布の明度L*と高い相関があることが分かった.また,傷みの速さは,布のたて糸方向の剛軟度に関係することが分かった.
剛軟度,密度,厚さ,糸の太さ,糸撚り数,及び明度L*を説明変数として,傷みの速さを目的変数とした重回帰分析から,傷みの速さが明度の高い布ほど遅く,たて糸方向の剛軟度が大きいほど大きい傾向を示す妥当な重回帰式が得られた.