本研究では,柿渋製造および柿渋加工,現代の染織作家による作品製作に関する調査結果を参考に,18種類の柿渋紙衣和紙の試作品を製作した.この試作品を比較した結果から,衣服材料としての柿渋紙衣和紙に最適な製作工程を導き出し,オリジナルの柿渋紙衣和紙を製作した.製作した柿渋紙衣和紙の強伸度測定の結果から布地に近い値が得られたことで,衣服材料として使用できる可能性があることを確認した.さらに,柿渋加工を施していない和紙と柿渋紙衣和紙の測定値を比較することで,柿渋加工により和紙の強度が向上するとともに,耐水性も得られたことを確認した.実際の衣服製作では,曲げ反発性の結果から明らかになった硬さを利用したシルエット形成,柿渋加工により向上した強度を利用した布地に不向きとされる構成方法により,柿渋紙衣和紙の特徴を生かした独創的なシルエットやディテールのデザイン提案ができる可能性を示した.