家庭用柔軟剤の主成分である二鎖型のカチオン界面活性剤を用いて,柔軟処理による布の物性変化を実験的に調べた.フィルムを用いて処理を行い,X線光電子分光法,原子間力顕微鏡法および水晶振動子法により界面活性剤の吸着挙動を調べたところ,標準使用量の5倍程度までは濃度の増加とともにセルロースおよびPET表面への吸着量が増加する傾向を示した.綿タオルでは厚さの増加と摩擦係数の減少が認められるが,綿,綿/ポリエステルおよびポリエステルの各平織布ではこれらの変化はなかった.また,これらの平織布では,防しわ性や引張強伸度などの力学特性も殆ど変化しなかった.一方,吸水性や帯電性などの水分特性は処理により大きく変化し,綿タオルおよび綿布では吸水性の低下が,ポリエステル布では吸水性や帯電防止性の増大が,それぞれ顕著に観察された.吸水性の変化に関して市販柔軟剤で処理した各種布でも同様の傾向を示した.