本研究は,がん治療の副作用である脱毛時に利用される医療用ウィッグの温熱特性を明らかにすることを目的とする.サーマルマネキンによる6 つのショートヘアスタイルのウィッグの熱抵抗を計測した.あわせて剃髪した10 名の男性被験者による夏季を想定した環境下でウィッグを着用し,快適感とウィッグ内温度と湿度を計測した.結果は以下の通りである. (1) 顕熱抵抗値は0.06(℃・m²/W)前後で,ウィッグ間の差は少なかった.潜熱抵抗値は0.07(kPa・m²/W)前後で,人工毛の割合が多くなると高くなる傾向を示した. (2) 発汗を想定した人工気候室での静止時の着用実験では,10 人中9 人が頭部に暑さを感じ,8 人が蒸れを感じていた.この間のウィッグ内温度は36.5℃,湿度は80%RH であった.
リスクマネジメントが注目を集める中,商品・サービスのリスクに関する消費者情報の評価が非常に重要になってきた.本研究は,ある情報がどの程度リスクを強調しているかを判定するための,国際的に通用する尺度を作り上げることを目的としている.まず,リスク強調度の異なる美容・化粧品関連の30 項目の文章表現を日本語版で調査(中国語版は過去に発表済)し,両者の高い相関性を認めた.続いてリスク強調度が適当な間隔を示し,日本語と中国語で近い得点を示す6 項目を選出し,「基準スケール」とした.次に,この「基準スケール」を使用して,日本の書籍中のリスクを強調する記述表現の評価を行った.併せて,化学物質に関するリスク強調度を日中比較として得点別,種類別にまとめ,その傾向を調査した.その結果,日中ともにリスク強調度の高い書籍が多いが,日本では界面活性剤のリスクを強調するものなどが多く,中国では水銀のリスクを強調するものなどが多いことがわかった.