繊維製品消費科学
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58 巻, 1 号
「繊維製品の快適性・健康研究]特集号
選択された号の論文の23件中1~23を表示しています
時辞刻告
研究委員会報告
寄稿
解説
報文
  • 坂下 理穂, 諸岡 晴美
    2017 年 58 巻 1 号 p. 55-63
    発行日: 2017/01/25
    公開日: 2017/01/27
    ジャーナル フリー

    高齢者の歩行動態の特徴を的確に表現しうる特徴量を抽出し,その特徴量に及ぼす要因として,ストライド長と積分筋電図を取り上げ,それらの関係性からつまずきやすい歩容の特徴を明確化することを目的とし,高齢者と若齢者の歩行動態および積分筋電図を検討した. 膝関節・足関節・足趾関節の角度・角速度・角加速度についての歩行周期曲線から最大値と最小値との差,すなわち両振幅(ΔS)を特徴量として抽出した.膝関節や足趾関節に比べて,足関節の角速度および角加速度において,若齢者と比べΔS の非常に小さい高齢者がみられた.また,足関節角速度のΔS が小さい高齢者においては,ストライド長が短く,主働筋も検出されなかった.これに対して,足関節角速度のΔS の大きい高齢者ではストライド長が長く,若齢者と同様に,前脛骨筋および腓腹筋内側頭が主働筋として検出された.すなわち,つまずき予防靴下の設計においては,足関節角速度のΔS を指標として用いることが有用であり,ΔS にはストライド長と前脛骨筋および腓腹筋内側頭の積分筋電図が強く関係していることがわかった.

  • ―ハイスピードカメラによる三次元動作解析―
    竹 瀟瀟, 田村 照子, 小柴 朋子
    2017 年 58 巻 1 号 p. 64-73
    発行日: 2017/01/25
    公開日: 2017/01/27
    ジャーナル フリー

    振動抑制に配慮したブラの設計を目的とし,ハイスピードカメラを用いて,歩行,走行,ジャンプ時の乳房振動を観察した.異なる乳房の大きさの若年女性8 名を被験者として,皮膚粘弾性と乳房の圧縮性を測定,乳房振動との関係を検討した.主たる結果は以下のとおりである.(1)乳房x,z 軸方向の振動軌跡は運動の種類によって特異的であり,乳房が大きいほど上下の振幅が大きい.(2)乳房の上下振動は,いずれの運動においても基体の動きとは時間的なズレを持って振動し,乳房振動には慣性の影響が大である.(3)いずれの運動も平均振幅,速度,加速度は,乳房外側2 点は内側の2 点より大きく,運動中の乳房外側の振動を抑制することが重要である.(4)乳房の大きさと,歩行・走行時の乳房上下・左右方向およびジャンプ時の上下方向の平均振幅,速度との間には,有意な高い正の相関が認められた.歩行・走行時の振幅は皮膚の回復率R7 との間に正の,走行時の振幅は圧縮応力F10mm と負の相関を示し,柔らかい乳房ほど大きく揺れることが示された.

  • 大橋 真理子, 内田 有紀, 山口 さやか, 丸山 智美, 成瀬 正春
    2017 年 58 巻 1 号 p. 74-79
    発行日: 2017/01/25
    公開日: 2017/01/27
    ジャーナル フリー

    大型の食器洗浄機が導入されている大量調理施設の厨房室は,高温多湿となりやすい.本研究の目的は,暑熱環境で既存厨房服を着用して洗浄作業をした時に,体に与える影響を明らかにすることである.平均年齢61.6 歳の健常な5 名の女性が,既存厨房服または防水服(対照)で45 分間の食器洗浄作業を行った.主観的疲労感,唾液α-アミラーゼと口腔温の測定を,作業開始前,作業開始30 分後および45 分後,および作業終了15 分後に行った.作業開始30 分後および45 分後は,既存厨房服着用群および防水服着用群(対照)ともに,何れの測定項目においても作業前に比較して有意に高値を示した.作業終了15 分後の既存厨房服着用群の口腔温は,作業前に比較して有意に高値を示した.しかし,対照群における口腔温は作業開始前と有意な差を認めなかった.防水着は,既存厨房服に比較して,食器洗浄作業の労働負担を軽減することが示唆された.

  • 薩本 弥生, 丸田 直美, 斉藤 秀子, 諸岡 晴美
    2017 年 58 巻 1 号 p. 80-89
    発行日: 2017/01/25
    公開日: 2017/01/27
    ジャーナル フリー

    ブラジャー着装時のズレ防止や防振性の観点から,動作時の胸部動態や着装感に年齢・身体特性・ブラの種類が及ぼす効果を明らかにするために以下の実験を行った.被験者は若年群9 名(19-22 歳),中年群6 名(40-62 歳)を対象とした.胸部の身体特性を明らかにするため三次元画像解析による身体形状,胸部圧縮変形量,超音波画像診断による脂肪厚,衣服圧を計測した.振動やズレを計測するためにハイスピードカメラによる三次元動作解析を行った.ブラの着装条件は,補整ブラのワイヤ有とワイヤ無,スポーツブラ,ノーブラの4 種,運動は前方挙上(180˚)である.ハイスピードカメラによる三次元動作解析により動作時の乳頭点では,補整ブラよりスポーツブラの振動抑制効果が高く,中年群は若年群より振動が大きくブラによる差が小さいこと,中年群では脂肪厚が厚くカップサイズが大きい人ほど振動もズレも大きいこと,若年群では胸部の圧縮変形量が小さい人ほど振動が小さいことが明らかとなった.動作時の衣服圧は乳頭位とサイドパネルではスポーツブラが補整ブラよりも有意に小さいが,下部胸囲では逆だった.動作後の着装感評価でズレ感は振動感および快適感に相関があった.動作時には適度に下部胸囲位を圧迫したブラは振動やズレを抑えるため快適と感じると考えられる.

  • ―Heat Loss・Mass Loss 法の差異に関する実験的検討―
    田村 照子, 官治 沙奈恵, 岡西 良平, 岸野 淳
    2017 年 58 巻 1 号 p. 90-97
    発行日: 2017/01/25
    公開日: 2017/01/27
    ジャーナル フリー

    発汗サーマルマネキンによる着衣の蒸発熱抵抗の測定精度向上に向けて,Heat lossHL)法 Mass lossML)法の差異とその原因に関する実験的検討を行った.実験条件はマネキン皮膚温・環境気温とも34℃の等温条件とし,模擬皮膚としては綿ニット(C スーツ)とこの上に透湿防水布を被覆したもの(G スーツ)の2 種,着衣はT シャツ・半ズボン,男性用スーツ,つなぎ服の3 種,測定・計算方法としてはHL 法とML 法の2 種とした.HL 法では蒸発熱抵抗の部位差についても検討を加えた.各条件を要因とした分散分析の結果,いずれの模擬皮膚条件でも着衣条件については有意差が認められた(P<0.01).一方,C ス-ツではHLML 法の差が大きいのに対し,G スーツではその差が僅少となることが示された.部位別蒸発熱抵抗における模擬皮膚条件の差からも,皮膚から着衣への吸水・拡散が両者の差異を生じていることが示され,今後の測定法としてG スーツの使用が有効であることが示された.

  • 小松 陽子, 石丸 園子
    2017 年 58 巻 1 号 p. 98-107
    発行日: 2017/01/25
    公開日: 2017/01/27
    ジャーナル フリー

    イヌは人と異なり主観評価ができない.そこで,イヌの嗜好性を評価する方法として,イヌの背部に付けたマーカーを追尾し,敷材を選択する行動を客観的に数値化する行動解析手法を検討した.敷材への臥位姿勢での滞在時間が長いと,イヌがその敷材を選択したと判断した.本方法により,日常使用している敷材は,初めて使用する敷材に対して,臥位姿勢での滞在時間が長い傾向がみられた. また,同様に2 種類のマットレスを用いて行動解析をし,体圧分散性に優れ,イヌと敷材との間の温湿度が低い敷材に,10 頭中7 頭のイヌが臥位姿勢で長時間滞在することが確認された. このように,本方法によりイヌが何らかの理由で選択行動をとっていることがわかり,イヌの敷材の嗜好性評価法として本行動解析手法を活用できることが示唆された.

  • 深沢 太香子, 谷 明日香
    2017 年 58 巻 1 号 p. 108-114
    発行日: 2017/01/25
    公開日: 2017/01/27
    ジャーナル フリー

    健康な20歳代,40歳代,60歳代の男性を対象にして,人体表面への接触物の温度評価能と温度感受性における加齢による影響を検討した.また,その身体部位による違いも検討した.体表に接触する物体の温度評価能は,各年齢層において高く,年齢による違いは認められなかった.また,身体部位によって温度評価能が異なることはなかった.一方,温度感受性は,20歳代男性は温覚と冷覚ともに鋭敏であるのに対して,40歳代と60歳代男性の温覚と冷覚は鈍化して低下していることが検証された.特に,40歳代と60歳代男性の下肢における冷覚感受性の低下は顕著であることが明らかとなった.

資料
  • ―毛細血管観察装置M320 を用いた試行的研究―
    濱田 恭子, 平田 耕造
    2017 年 58 巻 1 号 p. 115-123
    発行日: 2017/01/25
    公開日: 2017/01/27
    ジャーナル フリー

    本研究は2 つの実験から構成されている.実験1 では,25℃環境下,安静時に末梢毛細血管観察装置を用いて左手指4 本の爪床部皮膚における毛細血管血流速度,血流量の特徴を明らかにし,最も適した観察指として全体の平均に近い中指を選択した.実験2 では,室温を25℃から20℃,さらに15℃へそれぞれ15 分間で低下した時,指皮膚温と毛細血管の血流速度および血流量変化の特徴を明らかにする目的で,自己申告による冷え性者2 名と非冷え性者2 名を含む被験者4 名について測定を行った.20℃への低下では,指皮膚温の低下に伴っていずれの被験者でも血流速度の低下および血流量の減少が観察された.しかし15℃への低下では,指皮膚温の急激な低下にも関わらず血流速度の上昇および血流量の増加が全被験者で観察された.これらの結果から,室温低下時の毛細血管血流変化には動静脈吻合(AVA)血管の反応によって強く影響されていることが示唆された.

技術レポート
  • 串田 啓介
    2017 年 58 巻 1 号 p. 124-128
    発行日: 2017/01/25
    公開日: 2017/01/27
    ジャーナル フリー

    被験者が快適にウォーキングを実施する速度を快適歩行速度と定義し,快適歩行速度を高める設計を施した機能性レギンスを開発し,その効果を検証した.45名の被験者に対して開発品の着用あり/なしでの快適歩行速度を計測した結果,78%の被験者の快適歩行速度が向上し,開発品を着用していない状態に比べ7.1%の速度上昇が見られた

  • ―防振性の高いブラジャー開発―
    矢田 和也, 出口 潤子, 高橋 順一
    2017 年 58 巻 1 号 p. 129-136
    発行日: 2017/01/25
    公開日: 2017/01/27
    ジャーナル フリー

    本研究においては,ブラジャーを対象に,CAE技術を用いた商品設計技術を構築することによ,商品機能の発現の原理解明を行い,既存の設計技術では両立が困難であった「防振性」と「快のトレードオフの関係を解決し,着用快適性の高いブラジャーの開発検討を行った. 人体及びブラジャーの3次元有限要素モデルを構築し,着用シミュレーションを行い,仮想的に験を繰り返すことで,着圧の上昇を抑えつつも,高い防振性を有する最適な商品構造を導く可能なことを明らかにした.また,シミュレーション結果と実際の着用試験による結果の比り,高い整合性も見られたことから,CAE技術による商品設計技術の有用性も明らかにすができた

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