非フッ素系の撥水処理法である表面固定化法の綿布への影響を知るために,KES-FB システムを用いて処理布試料の力学特性を測定し, 対比試料として樹脂を固定化剤として用いる市販撥水剤で処理を施した処理綿布の力学特性と比較・検討を行った.その結果,表面固定法による処理綿布の力学特性値は,曲げ特性,せん断特性が大幅に低下することが明らかになった.このことは単繊維表面に一様に固定化された炭化水素鎖間での摩擦力の影響により,糸間あるいは単繊維間の摩擦力の低下に起因すると考えられる.本実験における改質処理は,いずれも布(織糸)表面の改質であるが,表面特性値にあまり大きな変化が認められなかった.基本風合い値の変化はいずれの改質処理とも大きな変化は認められず,力学特性で起きた変化は,それぞれの力学特性値の関連により,風合い値ではうまく表現することができないのかもしれないと考えられる.
繊維・アパレル産業の企業間取引ネットワークにおいて,8 分野(総合アパレル,レディス,メンズ,デザイナー,ベビー・子供服,インナーウエア・靴下,スポーツウエア,ジーンズ・ユニフォーム)計1476 社について,複雑ネットワーク分析を実施した.全体1476 社についてと代表的な3 分野として,総合アパレル217 社,レディス603 社,メンズ202 社のそれぞれの取引関係数について,次数分布の両辺対数変換を施したところ,全体と3 分野それぞれにおいて,べき指数 γ ⋍ -2 の自己相似的構造が確認された.また,全体と3 分野のそれぞれはネットワーク直径が6 次以下であるスモール・ワールド性も確認された.さらに,ネットワークの中心性に関する指標により,繊維・アパレル産業の多くの分野で,商社がネットワークの中心的な取引を展開していることが判明した.