本報では若年女性の姿勢に影響する要因を検討するために,バッグ携行時の立位姿勢について分析した.バッグに関する現状調査より,バッグの種類と携行方法はリュックサック(バックパック)が両肩かけ,ショルダーバッグが肩かけ(右・左),斜めかけ(右・左),トートバッグが肩かけ(右・左),腕かけ(右・左)とし,総重量はすべて1.0kg,3.5kg,6.0kg とした.若年女性10 人を被験者とし,バッグ携行時および不所持時の正面と側面の立位写真を撮影し,8 項目の角度計測と分析を行った.その結果,リュックサック携行時は側面の傾きが減少傾向にあった.バッグの種類に関係なく,肩にかける場合はかけた側の肩が上がり,腕にかける場合はかけた側の肩が下がり,総重量が重いほどその傾向は高かった.実験直後の痛みや傾き感のアンケート結果から,6.0kg のトートバッグの腕かけは持ち手が腕にくい込み重いと評価され,リュックサックは他のバッグより痛さ等の負担が少ないことが示唆された.
JIS 衣料サイズの改正から20 年以上が経過し,日本人成人の人体寸法データベース2014−2016 に基づく改正について検討されている.JIS 衣料サイズは新しく制定されたISO 8559-3 に対応する必要がある.本研究では,日本人の人体寸法の推定を行い,ISO 8559-3 に対応するサイズ別人体寸法表を作成することを目的とする.日本人の人体寸法データベース2014−2016 の女性1633 名の人体計測結果を利用して,1633 名全体とDROP による体型分類別3 グループ,年齢層を25 歳未満, 25 歳~40 歳,40 歳~55 歳,55 歳以上の4 グループ,計8 グループについて分析した.身長,乳頭位胸囲,胴囲,腰囲,体重の計測項目から,重回帰分析に用いる変数の組み合わせを検討し,上半身にフィットする説明変数は,身長と乳頭位胸囲の2 変数が適当であることを確認した.重回帰分析により回帰係数の推計を行い,算出した定数と係数からDROP による体型分類別と年齢層別のサイズ別人体寸法表を作成した.さらに,胴囲,腰囲,体重を加えた5 変数のサイズ別人体寸法表を作成した.数値モデルにより,現代日本人の体型を幅広く推定することが可能である.また,人体寸法の推定により算出した,項目間のインターバルはパターンメーキング,グレーディング,フィット性の評価などに活用できると考える.