日常生活の中で,農作業や子供の遊びなどで土壌等が衣服に付着することがあり,近年では放射性物質を含む土壌による身体への影響が懸念されている.本研究では,繊維製品への微量な土壌の付着量とリリース量を定量的に精度良く測定するための試験装置と試験方法を開発した.試験装置は,手動ローラーで土壌を付着させた試験片を水平に装着し,その中央に荷重を一定の高さから落下させて土壌をリリースする仕組みである.この試験装置と方法を用いて,土壌付着量,土壌残留量,土壌リリース率を定量化することができた.次に,本研究の試験装置と試験方法の有効性を,よこ糸の異なるわずかな違いのある試験用素材を製織して検討した.その結果,素材の微少な違いが土壌リリース性の評価値に反映され,本研究で確立した装置と方法は,繊維製品に付着する微量な土壌リリース性の評価に有効であることが示された.
被服は個人心理の反映物でもあると同時に人と繋がるための手段でもある. 自分が日々どのように被服とかかわり,被服をどのように選択しているかを考えることは,人との関係性について振り返ることにも通じる.本研究では,心理教育的なアプローチによるプロジェクト学習の開発を目指している.その第一報として,被服を活用した自己理解のための尺度「Clothing and human bond scale」を作成し,その有効性を検証するために大学生を対象に検討した結果をまとめた.人との繋がりに関する理論「原子価論」を用いて,パーソナリティ傾向である原子価類型と被服選択との関係を分析した結果,一定の関連性を見出すことができた.今後,より信頼性の高い尺度の作成を目指すとともに,原子価論を用いたプロジェクト学習の開発を行い,学生たちの社会性,社会人基礎力を身につけさせていきたい.