米のとぎ汁は古来より洗浄剤として用いられてきたが,実際の洗浄力のレベルや,その洗浄メカニズムについては明らかにされていない.そこで,脂肪酸と無極性油をモデル汚れとして用いて米のとぎ汁の洗浄力をSDS 水溶液,米ぬか溶液,麺のゆで汁などと比較するとともに,米のとぎ汁に含まれるタンパク質やデンプン等をモデル化した試料液による洗浄性と比較した.また表面張力,粒度分布等のデータから,洗浄力要因について推定した.その結果,米のとぎ汁にはかなりの界面活性作用が認められ,SDS ほどではないが水よりは明らかに優位な油汚れに対する洗浄性が認められた.またその要因として,固体デンプン粒が固体状界面活性剤や研磨剤として作用し,さらに溶解タンパク質や米ぬか油等が複合的に作用して洗浄力を発揮していることが推定された.更に米のとぎ汁に関するWEB 上の消費者情報を分析した結果,洗浄メカニズムに言及した情報は少なく,一部で非科学的な主張も見られた.しかし,米ぬか油,デンプン,タンパク質等の個別の要因を挙げているサイトが比較的大きな割合を占めており,うまく活用することにより科学的な消費者教育に利用できる可能性が示唆された.