雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
34 巻, 4 号
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  • 森林 成生, 樋口 敬二
    1972 年 34 巻 4 号 p. 165-172
    発行日: 1972/12/25
    公開日: 2009/07/23
    ジャーナル フリー
    1969年3月, 長岡市の雪害実験研究所において, 融雪の人工抑制に関する基礎的実験を行なった. 融雪を抑制する材料として, 布地はナイロン, ビニロン, 帆布, 網を使い, ほかに断熱材であるスチロホーム (厚さ2.5cm), 日射をさえぎる板囲い等を設置した.布地は, それぞれの種類について, 雪面に蜜着させた場合と, 雪面上10cmに保った場合の二通りの実験を行なった. その結果, 最も抑制効果の大きいのはスチロホームで, 自然融雪量の19%まで融雪を抑制することがわかった. 同年7月に行なった北アルプス劔沢源頭 (2750m)での抑制実験でも, ほぼ同様の結果を得た.布地では, 雪面に密着した場合, ナイロン, 帆布では融雪を促進したが, 雪面から10cm離した場合には, いずれの種類も融雪を抑制することがわかった.
  • 藤井 理行, 樋口 敬二
    1972 年 34 巻 4 号 p. 173-186
    発行日: 1972/12/25
    公開日: 2009/07/23
    ジャーナル フリー
    富士山頂において, 富士山測候所付近で存在を知られていた凍土は, 山頂一帯にわたる永久凍士 (permafrost) ではないかと考え, 凍土およびその上部融解層 (活動層, activelayer) の調査を, 1970, 71年に4回にわたっておこない, 次のような結果を得た.
    (1) 1971年10月の調査から山頂部の凍土は, 越年する凍土すなわち永久凍土である事を確認した.永久凍土の分布は, 山頂部一帯に広がり, 下限高度は2,800~2,900mで, 高緯度永久凍土南限の年平均気温とよい一致を示す高度である.
    (2) 活動層厚は, 山頂部においては7月末で50~130cmで5月末の積雪水量が大きい所ほど小さい.
    (3) 火口稜線内部の活動層厚は, 消雪後の積算温度 (thawing index) の平方根にほぼ比例し, その比例定数である融解係数は6.44である.
    (4) 火山砂礫の透水性は, 凍土の方が同じ有効空隙率を有する非凍土に比べはるかに良い.10月に採取した凍土及び非凍土の透水係数 (permiability) は, それぞれ約0.62×10-2cm/s, 0.74×10-2cm/sで, 透水性は良好である.透水試験及び凍結面の観察から, 永久凍土の成長は, 水の供給という点で, 熔岩帯では制約を受けるが, 砂礫帯では制約を受けないと考えられる.
    (5) 積雪が最寒期に少なく, 気温が0℃を上まわる4月末から5月にかけて多いという富士山頂部での傾向は, 永久凍土の形成, 維持という点で有利な役割を果している.
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