凍結した粘性土内にはアイスレンズと呼ばれる純氷層が析出する・非常に大きな凍上性を持つ粘土を用いて大きな析出氷晶を作り,その一軸圧縮試験を行った.
一軸圧縮強度への温度,圧縮方向,歪速度,供試体高さ依存性に関する実験から次のような興味ある結果が得られた.
1) 析出氷晶の成長方向に圧縮した場合の一軸圧縮強度q
u//は温度の低下に伴って増加し,各種の氷はもちろん凍結粘性土,凍結豊浦標準砂の値を上廻り,-10℃で190 kgf/cm
2を越える大きな値となる.一方,成長方向に垂直に圧縮した場合の一軸圧縮強度q
u//の値は小さく,市販氷のq
uにほぼ等しい値となる.
2) 一定の温度のもとではq
u//を最大にする歪速度が存在し,その歪速度は-3℃で1%/min附近のところにある.但し,0℃附近では状況がかわり比較的速い歪速度では圧縮中に供試体の融解による温度低下を伴い,q
u//とその時の温度はClausius-Clapeyronの式から計算される圧力と氷点の関係と一致する.
3) q
u//は歪速度が一定の場合,15 cmから供試体高さが低くなるにつれて減少し,高さが1cm以下になると圧縮端面の拘束効果と考えられる影響が現れる.
4) 氷晶の破壊様式は延性破壊と脆性破壊に分類でき,温度が低くなるかあるいは歪速度が大きくなると延性破壊から脆性破壊へ遷移する.延性破壊では粒界破壊および粒内破壊と考えられるクラックの方向が比較的揃って発生するのが観察された.
これらの結果は凍結粘性土の強度特性を知るための足掛りとなることが期待できる.また,この析出氷晶は幾何学的配列が非常に揃った角柱状多結晶氷であったことから,多結晶氷の力学的特性研究のための有効な試料として利用できる可能性もある.
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