凍上性が大きく異なる4種類の試料土を用いて凍上力実験を行なった.実験の装置及び方法は前の論文(高志・他,1979a)と同じである.
Radd and Oertle(1973)や著者等(高志・他,1979a)は,凍上力σ
uが冷却面温度θ
cだけの関数であり両者に直線関係があることを示した.しかしながら,この関係がθ
cの低下につれてどこまで成立するかという興味ある課題が残っていた.本実験の結果から,σ
uとθ
cは,θ
cが比較的高い範囲では直線関係にあるが,θ
cの低下に伴なってσ
uは直線から外れて最終的には一定値に収束することが明らかとなった.これはσ
uの最大値であって最大凍上力σ
u maxと呼ぶべきものである.σ
u maxの値は土の種類によって決まる固有値として与えられ,爼橋粘土では300kgf/cm
2以上,根岸シルトは130kgf/cm
2,七尾シルトは30kgf/cm
2,豊浦砂では4kgf/cm
2であった.σ
u maxはθ
cに依存せず凍土中の不凍水から成る通路が閉塞する温度θ
critに支配され,σ
u maxとθ
critとの間には拡張したClausius-Clapeyronの熱力学式が成立する.このことは,θ
cがθ
critよりも低い場合には凍土中ではアイスレンズがθ
critの部分で成長し,それ以下の温度の部分ではアイスレンズが発生しないという観察結果からも裏付けられた.更に,アイスレンズの発生領域が凍土中の温度と有効応力及びθ
critとから明確に定めることができる.
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