雪氷
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46 巻, 4 号
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  • 海老沼 孝郎, 前野 紀一
    1984 年 46 巻 4 号 p. 153-161
    発行日: 1984/12/29
    公開日: 2009/07/23
    ジャーナル フリー
    自然積雪の圧密過程は, 荷重を受けた状態での焼結現象であり, 駆動力は, 系の過剰表面自由エネルギーと荷重による力学的エネルギーの和である.本実験は, このような2種類の駆動力を考慮した加圧焼結という立場で雪の圧密過程を詳しく測定, 考察するために行なわれた.
    実験は, 氷の微小粒子を使用して, 温度範囲-40℃~-9℃, 圧力範囲0.4MPa~2.0MPaで行なわれた.密度の時間変化から圧密の歪速度が求められるとともに, 試料の薄片観察が行なわれた.
    密度が約750kg/m3になると, 氷粒子間の結合は, 個々の氷粒子が識別できない程発達した.最終的には, 空隙は孤立して, 氷中に捕えられた.歪速度の対数と密度との間には, 近似的に直線関係が得られ, 直線の折れ曲がる点が限界密度と定義された.限界密度以下の密度範囲では, クリープ機構とともに氷粒子の再配列機構が寄与しているのに対して, 限界密度以上では, クリープ機構が卓越する.実験条件下では, 転位クリープの寄与が大きいが, 密度の増大とともに, 拡散クリープの寄与が大きくなると結論された.
  • 第4報雪水二相流の管内流れの観察
    白樫 正高, 佐藤 謙一, 佐藤 靖仁, 古塩 淳, 梅村 晃由, 脇屋 正一
    1984 年 46 巻 4 号 p. 163-170
    発行日: 1984/12/29
    公開日: 2009/07/23
    ジャーナル フリー
    雪押込装置の開発および雪の分率測定方法の改良により, 円管内の雪水二相流について精度の良い安定した実験が可能となった.これらを用いて, 雪水二相流の流れの状態と流速Um, 雪の分率C, 管径D, 雪質, 管の姿勢の影響を調べた.流れの観察から, 雪水二相流の流れの状態は, 概略 (1) 塊状流れ (Cluster Flow), (II) 均質混合相中に雪塊が浮遊する流れ, (III) 均質流れ (Homogeneous Flow), (IV) 柱状流れ (Cylindrical Flow) に分類される事がわかった.このうち, Um, Cともに小さい場合に見られる塊状流れおよびCが大きい場合の柱状流れは, プラスチックビーズのような互に付着しにくい固体粒子を固相とする固液二相流には見られない, 雪水二相流に特有の流れである.
    これらの流れの状態はほぼ流速Um, 雪の分率C, 管径Dにより決り, C, とフルード数Frにより一般的に表される事が示された.雪質および管の姿勢は流れの状態にあまり強く影響しなかったが, 概略次のような傾向が見られた.新雪はざらめ雪よりも混合されにくく, 従ってざらめ雪の場合には均質流れとなるFrにおいても新雪の場合には塊状の雪が存在した.また新雪の場合の方がより小さいCの値で柱状流れとなった.管が水平の場合, 塊状流れにおける雪塊は鉛直管の場合より管軸方向に伸びた形となり, 管の上壁寄りを移動した.均質流れおよび柱状流れに対しては管の姿勢による影響は見られなかった.
  • 第5報直管における圧力損失に対する諸因子の影響
    白樫 正高, 佐藤 靖仁, 古塩 淳, 梅村 晃由, 脇屋 正一
    1984 年 46 巻 4 号 p. 171-178
    発行日: 1984/12/29
    公開日: 2010/05/07
    ジャーナル フリー
    雪水二相流の直円管内流れにおける圧力損失 (水力勾配i) のと流速Umの関係に対する, 管径D, 流れの方向, 雪の分率C (吐出される雪水混合体に占める雪の体積割合) および雪質の影響を実験的に調べた.
    清水 (せいすい) の水力勾配をiwとするとき, 雪の混入による水力勾配の増加率 (i-iw) /iwは, 水平管の場合, 管壁での摩擦力の増加によりCに比例して増加した.鉛直管の場合 (i-iw) /iwは, 見かけの密度の変化により, 上昇流ではCに比例して減少し, 下降流ではCに比例して増加した.いずれの場合も, Umが大きくなると雪の混入の影響は小さくなりiiwとなった.
    水力勾配に対する雪質の影響は小さく, 水平管の場合に, C=9~15%, 16<Fr<80 (フルード数FrUm2/ (|1-s|gD), sは氷と水の密度比) の範囲で, 新雪の方がざらめ雪よりもやや大きな水力勾配を与える傾向が見られる程度であった.雪の混入による水力勾配の変化を, 付加圧力損失係数φ= (i-iw) / (Ciw) で表すとき, φはUm, C, D, 雪質によらずフルード数Frのみの関数となる事が示され, これに対し次式が提案された.水平管 : φ=23Fr-0.85;鉛直管 : φ=〓 (2/λw) Fr-1 (-;上昇流, +;下降流, λwは清水の管摩擦係数).
  • 武田 一夫, 中澤 重一
    1984 年 46 巻 4 号 p. 179-187
    発行日: 1984/12/29
    公開日: 2009/07/23
    ジャーナル フリー
    土が凍結すると, 土中に氷層ができて, 土全体が体積増を起す現象が凍上である.このとき一般には, 凍土の中に氷層がとびとびにでき, 氷層と凍土層とが交互に入り混じっている.このような場合, 土中から氷層が分離析出する条件を定量的に把握することは難しい.そこで, 土中のある面から連続的にいくらでも厚い氷層がのび出る (完全凍上) ような実験条件を設定した.それによると, 円柱形をした供試体の上部および下部の側面から温度を調整することにより, 凍結面をあるところで停滞させ, 凍結面から氷層だけがのび出て行くことができる.このような完全凍上の場合には, 一つの凍土の温度勾配に対して未凍結土の温度勾配を変えると, 凍上速度 (氷の成長速度) はある最大の値から零まで変わり, 凍上速度は凍結面での熱流量差に比例することが認められた.このことから, 完全凍上が起りうる範囲の一方の境界は凍上速度が零すなわち熱流量差が零で定まるのに対し, もう一方の境界は凍上速度の最大の値 (臨界凍上速度) に対応する凍土の温度勾配で定まることがわかった.凍土の温度勾配を変えたいくつかの実験から, 臨界凍上速度は, 凍土の温度勾配に比例した.実験に用いた土では, その比例定数は2.66×10-5cm2/s・℃であった.
  • 生頼 孝博, 山本 英夫, 岡本 純, 伊豆田 久雄
    1984 年 46 巻 4 号 p. 189-197
    発行日: 1984/12/29
    公開日: 2009/07/23
    ジャーナル フリー
    早強ポルトランド・セメントを土に混合することによる凍上及び解凍沈下抑制効果を調べるために, 開式の室内凍上・解凍沈下実験を行った.供試体は藤の森青粘土に種々の割合でセメントを混合し, 3種類の荷重で圧密しつつ一週間養生して作製した.拘束応力が小さい場合には吊り下げ式凍結装置を用い, 拘束応力が地下数10mに相当する場合には開式凍結・解凍試験装置を用いた.
    凍上量は, セメント混合比Wcs (炉乾土に対する重量比) で10%程度セメントを加えることにより急激に減少し試料土のみの場合の1/8~1/4になるが, それ以上Wcsを大きくしても若干の凍上は残るという結果を得た.未凍結土の動水抵抗増加による凍上抑制効果について, 実測した透水係数を用いて検討を行ったがその効果は小さく, セメント混合による吸水能力の低下が凍上抑制の主因であると推察された.
    一方, 解凍沈下は試料土のみでは2%程度凍結前よりも沈下するが, セメント結合に起因する土粒子同志の結合力の増加により, Wcs=8%程度で沈下は無くなりそれよりも大きいWcsでは若干の浮上となった.
    以上のことから, 藤の森青粘土のような土の場合, Wcs=10%程度のセメント混合は凍上及び解凍沈下抑制において有効な方法であることが, 室内実験において確認された.
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