北アルプス,立山・剣岳連峰の内蔵助雪渓において,1983年9月14日インパルスレーダーを用いて雪渓の内部構造を調査した.本調査により,雪渓の基盤地形および内部構造の調査にインパルスレーダーが極めて有効であることが示された.以下に主な結果を列記する.1)氷体の深さは約30mに達する.この値は観測されている国内の越年性雪渓の氷体部の厚さとしては最大のものである.2)吉田他(1980)によって発見された不整合面は広く二次元的に分布しており,深さは浅いところで2m,深いところで9mであった.3)不整合面の下の氷体中には礫層と考えられる層が多数存在する.4)これらの礫層の傾斜方向は,不整合面および現在の雪渓表面のそれとは大きく異なっている.このことは,不整合面より下の氷体が現在とは異なった涵養・消粍環境下,従って異なった気候下で形成したことを示唆している.5)不整合面の一部は,1980年の9月末には雪渓表面に孤立した岩屑丘として露出していた.6)岩屑の崩落・堆積およびそれに伴う氷体の融解促進・抑制効果はこの雪渓の局所的な構造の形成を支配する重要な因子の1つである.7)プロテラスランパートの裾および圏谷壁の裾の下に化石氷体の存在を示唆するエコーは見出されなかった.
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