鳥海山北東斜面にある吹きだまり型多年性雪渓のひとつ, 七ッ釜南東部雪渓を定期的に10年間調査した.その結果, 雪渓規模の変動について次のことがわかった.
1) 1982年をピークに, 雪渓は縮小傾向にある.これは近接地域の冬期降水量の減少傾向と一致している.
2) 雪渓規模が前年に比べて拡大しているか縮小しているかは, 原則として秋田県南部における前年の夏期気温指標 (月平均気温の平年偏差の和) が前年に比べて低いか高いかにそれぞれ対応している.
3) 原則に合わない場合として, 次の二つがある.前年にこの雪渓が一定限度以下に縮小した場合には, 当年の雪渓規模は当年の夏期気温の傾向 (前年比での高低) に依存する.また, 一定限度以下に縮小しない場合でも, 当年の冬期降水量が一定限度より少なかった場合には, 当年の雪渓規模は縮小する.
4) 以上のことは, 一定規模以上の雪渓が周囲の微気候に影響を与えるという現象の可能性を示唆する.
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