本研究では, 種々の形状をした防雪柵まわりの流れ場と雪の堆雪形成過程を数値シミュレーションにより調べ, 柵形状が流れ場および堆雪形状に対してどのような影響を及ぼすか, 定性的・定量的に見積もることを目的としている.計算方法は (1) 防雪柵まわり流れ場の計算, (2) 雪の拡散計算, (3) 風による積雪輸送の計算, (4) 雪面形状変化の計算の4段階からなる. (4) により計算領域の形状が変化するため, 時間的発展と共にこれらの各ステップを繰り返す必要がある.
流れ場の計算は, 差分法を用いて非圧縮性ナビエ・ストークス方程式を数値的に解くことにより行った.ただし, 領域形状は雪面に凹凸があるため複雑であることそして複雑な形状をもつ防雪柵も取り扱うため, 一般座標を用いて境界に適合する格子上で計算を行った.この点が従来の計算ともっとも大きく異なる点である.雪の拡散は移流拡散方程式を数値的に解くことにより求めた.雪面形状の変化は降雪および一度積った雪が風により輸送されることによりおこる.前者については落下する雪粒子に対する運動方程式を解くことにより, また後者は風による表面摩擦と雪の輸送量の関係から見積もることができる.そして, その結果を用いて雪面上の微小領域における質量保存則から雪面形状を決定した.
このような計算方法を用いて3次元の解析を行った.本研究では基本的な柵として直立密閉柵, 一般座標の特徴を生かした応用例として忍び返し密閉柵, 傾斜密閉柵そして傾斜面における直立密閉柵の合計四種類の防雪柵を選び, 流れ場および堆雪形状を計算してその有効性を調べた.その結果, 複雑な地形, 複雑な防雪柵に対しても定性的傾向は雪面の景観と一致しており, 一般座標を用いた3次元流れの数値シミュレーションは基本的に有効であると判断した.
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