雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
62 巻, 6 号
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  • 水上 直己, 前野 紀一
    2000 年 62 巻 6 号 p. 515-521
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2009/09/04
    ジャーナル フリー
    氷・氷摩擦係数の垂直応力依存性を1.2~17.3kPaの垂直応力範囲で調べた.実験は-0.5~-20℃の温度領域, また3種類の一定速度 (4×10-3, 4.5×10-2, 4×10-1m/s) で行われた.測定が行われた全ての温度, 速度において, 摩擦係数は垂直応力とともに減少し, 約6kPa以上の垂直応力で, ほぼ一定値をとった.摩擦係数 (μ) と垂直応力 (P) の関係は平均的にμ∝P-0.32で表せた.しかし, 本報告では, 測定されたせん断応力と垂直応力の直線関係に基づいて得られたMohr-Coulombの式 (μ=μO+A/P) を用いて解析が行われた.μOはクーロン摩擦係数, Aは付着力である.μOは速度の増加とともに減少した.この結果は摩擦熱による水膜発生がこのような低速度でも起っていることを示唆する.μOには温度依存性が確認され, -5℃附近で極小を示した.付着力 (A) は, 10~250Paという小さな値で, 温度の低下または速度の増加とともに増加した.
  • 中山 雅茂, 長 幸平, 下田 陽久, 坂田 俊文, 谷川 朋範, 西尾 文彦
    2000 年 62 巻 6 号 p. 523-535
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2009/09/04
    ジャーナル フリー
    本研究ではオホーツク海で行われた航空機搭載マイクロ波放射計による海氷観測実験のデータを用い, 一年氷の観測に有効な周波数帯・偏波の検討を行った.その結果, 89GHz帯を用いることにより一年氷の成長段階に関係無く, 海氷の有無 (センサの観測視野内の海氷密接度が100%) を識別できる可能性があることを明らかにした.さらに, 衛星搭載マイクロ波放射計SSM/Iの85GHz帯でも同様の結果を得ることができた.また, この研究においてマイクロ波放射計と共に航空機に同時搭載したVTRの画像から観測域の海氷密接度を簡便に算定する手法も開発した.
  • 中村 和樹, 西尾 文彦, 若林 裕之
    2000 年 62 巻 6 号 p. 537-548
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2009/09/04
    ジャーナル フリー
    1993年から海氷観測において衛星のSARデータの有効性を高めるために「衛星によるオホーツク海氷プログラム」が実施されている.オホーツク海の海氷厚を, 衛星のSARデータにより測定する可能性について, サロマ湖の安定して存在する氷を対象に実験を行った.サロマ湖の氷コアの解析結果は, 塩分濃度および層構造がオホーツク海の海氷と類似していることから, 典型的な薄い一年氷と同様な構造を持つと考えられる.各観測年において氷厚とSARの後方散乱係数の関係を導出した結果, 氷厚の増加に伴って後方散乱係数が減少する傾向があることが判明した.
    塩分濃度の高い海氷 (一年氷) からの後方散乱は表面散乱となり, 表面散乱は表面ラフネスと誘電率の大きさに関係する.表面ラフネスが一様であれば, 後方散乱は, 誘電率が大きくなると大きくなる.気温が海氷の結氷温度よりも低い場合は, 氷厚が増加すると氷の表面温度が低下する.氷の温度が低下するとブライン体積が減少し, 氷の誘電率は小さくなるために, 氷厚の増加とともに後方散乱係数が減少する.積雪および表面ラフネスが一様である条件において, SARの後方散乱係数から海氷厚分布を推定できる可能性がある.
  • 藤井 理行, 西尾 文彦, 亀田 貴雄
    2000 年 62 巻 6 号 p. 549-556
    発行日: 2000/11/15
    公開日: 2009/09/04
    ジャーナル フリー
    2000年7月15日から24日にかけて, ロシア連邦アルタイ山脈のソフィスキー氷河の涵養域 (標高3450m地点) にて掘削を主とする氷河調査を実施した.本調査の目的は, 1) ソフィスキー氷河での雪氷コアによる過去の気候・環境変動研究の可能性の評価, 2) ヘリコプター利用を含めた輸送や物資調達等設営的課題の解決, 3) ロシア人研究者との共同研究に関する検討で, 2001年度に実施予定の本調査の予備調査として位置づけられる.本報告では, 目的の1) に関連して実施した12.3mコアと, 3mピットの現場観測結果および気象観測結果, さらに目的の2) に関連した事項について報告する.ソフィスキー氷河涵養域は, 表面から8m深までは0.0℃であり, それ以深はマイナスになり, 10m深で最低雪温 (-0.11℃) を示した.また, 表面から12.3m深で14層の薄茶色の層 (汚れ層) が観察された.氷河上の気温は-4~+5.5℃, 風速は0~5m/sで推移した.風向は西から南西が卓越した.
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