雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
65 巻, 6 号
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  • 竹井 巖
    2003 年 65 巻 6 号 p. 511-522
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    雪試料の誘電的性質を,その経時変化と温度特性について示す.使用した雪試料は,-20℃の冷凍庫に保管していた保存雪または霜をふるいでほぐして試料セルに詰めたものである.雪の誘電的性質を50 Hzから5 MHzの周波数範囲,-15℃から-0.3℃の温度範囲で調べた.-1℃付近で焼鈍した場合,雪試料の誘電分散強度(静的誘電率)と低周波電気伝導度が時間とともに増加することが観察された.これらの経時変化は,試料内部の氷粒子間結合の成長に対応するものと考えられる.水分子配向に起因する誘電分散の-10℃での緩和時間は,氷の場合の10分の1程度に短い値を示した.また,誘電分散はCole-Cole図においてつぶれた形をしており,緩和時間が分布している傾向を示した.高周波数側への緩和時間の分布は,雪試料内部の氷表面の存在が,その表面付近の水分子の配向挙動を容易にしているとして説明できる.低周波電気伝導度には,雪試料内の氷粒子表面を流れる表面電気伝導成分が大きく寄与しており,-6℃程度以上で疑似液体層の影響によると考えられる増加も認められた.また,低周波電気伝導度(例えば100 Hzでの値)に融点近傍-2℃付近でピーク現象が認められた.
  • 南條 宏肇, 葛西 真寿
    2003 年 65 巻 6 号 p. 523-531
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    本研究では,環境へ与える影響が少なく高い効率が期待される熱交換井による地熱を利用した融雪システムを開発し,運用によって得られたデータの解析を行った.地下30mで約13℃という低温な地熱を利用した融雪は高い効率が期待される一方,エネルギー供給量が少ないために短時間で多量の融雪は困難である.この問題を克服するため,地下に貯水槽を設置し,雪を貯留して熱交換井を使って低温で長時間かけて融雪を行うシステムを開発した.取得データの解析により得られた結果は以下のとおりである.まず,貯留槽底面から流入する地熱量は1平方mあたり13W程度であり,この熱だけでは融雪は困難であることを定量的に明らかにした.次に,熱交換井運転では,交換井から2.3m離れた温度計測井では深さ10m以上の地温はほぼ一定であり,熱交換井による地熱移動はごく近傍のみで行われること,さらに,深さ30m太さ100mmの熱交換井の出力は定常状態で2.5kWと得られた.最後に,今回開発した,熱交換井による貯留型低温融雪システムは,予想以上に高い効率で融雪できることが定量的に明らかになった.
  • スギ林と比較した事例
    大原 偉樹
    2003 年 65 巻 6 号 p. 533-541
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    スギ・広葉樹混交林に発生した冠雪害の被害状況について,スギ林と比較し,その特徴を検討した.混交林や林縁部の被害は,スギ林に比べて著しく,スギ林の冠雪害でよくみられる被害木の集中分布は認められなかった.どの林分でもスギ,広葉樹は形状比が高い個体ほど被害が著しかったが,同じ形状比で比較した場合,混交林,林縁部はスギ林よりも被害率が高かった.このため,混交林とスギ林の被害の違いが単に形状比の違いだけで説明することはできなかった.また,混交林ではスギも広葉樹も小さいサイズの個体に被害が偏っており,林冠ギャップのある針葉樹林における被害の特徴と類似していた.そして,降雪遮断率の低い広葉樹が混在する混交林は,林冠ギャップが散在する間伐後のスギ林と同様に冠雪害に対する危険性が高い林冠構造を呈していた可能性が示唆された.
  • 東北地方北部太平洋側に於ける近年の暴風雪災害
    ト藏 建治, 林 信二
    2003 年 65 巻 6 号 p. 543-550
    発行日: 2003/11/15
    公開日: 2009/08/07
    ジャーナル フリー
    近年の温暖化傾向のため増加しつつある温帯低気圧の発達・接近で東北地方北部太平洋側(青森,岩手県)では2年続きの暴風雪災害が発生している.2003年3月8日と2002年1月27日に南岸低気圧の発達・接近によりこれら地域に記録的な降雪がもたらされた.被害の実態は強風・波浪による沿岸養殖に関わる漁業施設や港湾などの土木施設が金額的には大きく報告されている.しかし,太平洋から吹きつける東風によりもたらされる湿った重い雪(ヤマセ雪)によりビニールハウスや畜舎などにも大きな被害が出ており,被害域は降雪量の多さに良く対応している.暴風雪のたびに注目されたのは2万戸以上の停電が生じ,12時間以上に及ぶ長時間の停電も多発したことである.停電の原因は電線着雪と言った一次的な雪害ではなく,送電線付近の樹木が雪荷重により倒木・枝曲がりし送電線に接触することによる停電で雪による二次災害(雪害)である.森林の維持管理に対する充分な検討がくわえられない限り,今後もこの種の雪害は繰り返し発生するだろう.
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