大気最下層の吹雪層におけるエネルギー交換を調べるため,吹雪層を多層に分割し,差分化して計算する吹雪モデルを構築し,その概要を述べると共に妥当性を調べた.吹雪層の厚さを10mとし,積雪面近傍の0.1mまで,0.01mごとに吹雪層を調べた.摩擦速度が0.5m/sと0.75m/sの場合を考慮した.吹雪層のエネルギー交換を特徴づける基本的要素の出力応答は以下の通りとなった.1)下向き長波放射と比べ下向き短波放射に対する吹雪の影響は小さいものの,積雪面に近づくにつれて下向き短波放射は減少するが,上向き短波放射は増加する.いずれも,積雪面近傍での変化が大きい.2)吹雪粒子は吹雪層の射出率を高めるため下向き長波放射が増加する一方,積雪も黒体放射に近いため,上向き長波放射の変化は小さい.3)吹雪が発生すると風速は大きく弱まる.さらに4)粒子数の増加に伴い,気温及び比湿は吹雪下層で大きく変化する.これらの計算結果はこれまでの観測及び風洞実験結果を再現しており,吹雪層のエネルギー交換を特徴づける基本的要素がモデルによって示された.本研究では,エネルギー交換を伴う吹雪層について,吹雪現象における重要な物理過程を取り込みつつ,かつできるだけシンプルにモデル化した.このモデルを用いて,厚さが10mの吹雪層の鉛直構造を積雪面近傍の0.1mまで4次のルンゲ・クッタ法で計算し,0.5m/s及び0.75m/sの2つの摩擦速度の条件で吹雪層の鉛直プロファイルを調べた.出力応答は,1)下向き長波放射に比べ下向き短波放射に対しては吹雪の影響は小さいものの,積雪面に近づくにつれて下向き短波放射は減少し,上向き短波放射は増加する.いずれも,積雪面近傍での変化が大きい,2)吹雪粒子は吹雪層の射出率を高めるために下向き長波放射が増加する一方,積雪も黒体放射に近いため,上向き長波放射の変化は小さい.3)吹雪が発生すると風速が大きく弱まる.4)粒子数の増加に伴い,気温及び比湿は吹雪下層で大きく変化する.これらの計算結果はこれまでの観測及び風洞実験結果を再現しており,吹雪層のエネルギー交換を特徴づける基本的要素がモデルによって示された.
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