積雪中の化学物質の動態と融雪期の河川水質の変化の特徴を明らかにすることを目的として,北アルプスの東側に位置する,信濃川水系高瀬川の源流域において,積雪の化学的特性と河川水質に関する調査を行った.調査期間は2004年12月から2005年4月である.積雪調査の結果,積雪中のpHは低く,多くの試料で酸性降水の基準となるpH5.62を下回った.積雪中の化学物質は,降雪時の気圧配置によって,層ごとにイオン含有量が異なっていた.積雪中に含まれる化学物質の多くは,融雪期まで保存されており,融雪とともに積雪から流出していた.河川水質は,融雪期に大きく変化した.河川水のpHと電気伝導度は,流出高の増加に伴って低下した.融雪期前半の流出高の増加時には,河川水中のCl
-濃度とNO
3-濃度が高くなった.融雪期後半には,融雪にともなう流出高の日変動が観測され,河川水質も日変動を示した.河川水中の陰イオン組成では,流出高が増加する前はHCO
3-が約50%を占めていた.しかし,陰イオン組成に占めるHCO
3-の割合は,流出高の増加前後で約23%減少した.一方,流出高が増加する前と比べて,流出高増加時には陰イオン組成に占めるCl
-+NO
3-とSO
42-の割合は,それぞれ約12%増加していた.
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