北アルプス, 剱沢圏谷において積雪域の調査を, 1967年5月26日~30日, 7月11日~15日, 9月26日~29日, 10月17日の4回にわたっておこない次のような結果を得た.
(1) 9月29日における「はまぐり雪」の面積は, 4778m
2で, 質量は0.9×10
4トンであり, これは, 5月29日にこの一帯に存在した67.5×10
4トンの1.3%に相当する.
(2) コアドリルによる試料サンプリングの結果, はまぐり雪には3年の氷層しかないことがわかった. したがって, はまぐり雪は, 1964年に一度消失または極度に縮小したと考えられるが, そのような変動は, 冬期における雪の蓄積量と夏期の融雪量の変動によって説明できた.
(3) 雪渓においても, 涵養域と消耗域とが存在することがわかった。この年における涵養域比は, 0.54であった.
(4) 雪渓の氷層を構成する結晶粒は, 1963年に報告されているように大きな単結晶ではなく, 1.5mm以下であった. 結晶粒の結晶主軸の分布は, 表面では方向性をもたないのに, 最下部では, 基盤の最大傾斜の方向につよい集中性を示していた.
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