1974年8月, 東部ネパール・ヒマラヤのサガルマタ山 (英名エベレスト) から流れでているクンブ氷河上で熱掘削を行った. 掘削点は通称エベレスト・ベースキャンプと呼ばれている場所に近く, 消耗域の上部, 標高5,360mの地点であった.
掘削は掘削孔が凍結して掘削が不可能になるまで続けられた.最終深度は20.3mで, この深度まで掘削深度の時間変化を測定した.この測定結果を解析すると, 最終深度まで7層の氷の層が存在し, 3層は通常氷河氷の層, 3層が青氷か汚れを含む層, 残りの1層は比較的鉛直方向に分布している空気泡を含む層かあるいはほぼ水平に分布する含水層の可能性があることがわかった.
掘削孔の凍結速度から氷温を計算すると, 2mの深さで-2℃以下となる.一方掘削孔内にうめこんだサーミスターで, 同年10月23日に表面下2.7mの温度を測定したところ-5.3℃であった. 以上の結果から, クンブ氷河の消耗域においては, 氷温は極地型の分布を示すであろうと結論した.
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