垂直な壁面を有する氷海構造物に作用する氷荷重に対して氷と構造物境界での摩擦係数の影響について理論的および実験的研究を行なった.従来摩擦が問題とされていなかった圧壊時の氷荷重については, 極限解析の上界定理を用いて摩擦係数の効果を定式化し, 表面材料を種々変えた模型実験で得た氷荷重と比較してほぼ良好な対応を得た.
座屈破壊時の氷荷重に関しては, 数値解析が得られている自由境界と上下変位拘束境界という実際の境界条件の両極端の境界条件に対する解を結び付けるものとして, 氷板と構造物との境界での摩擦抵抗を考え, 実験的に摩擦係数が大きいほど氷荷重 (座屈荷重) が大きくなることを示した.
以上の結果により, 垂直な壁面を持つ構造物に対しても, 傾斜面を有する構造物同様に, 氷荷重は氷板と構造物の境界での摩擦の影響を受けることが判明した.それゆえ, 氷板と構造物との摩擦を低減することにより, 氷荷重を低減できることが, 垂直壁を有する構造物に対しても明らかとなった.
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