雪氷
Online ISSN : 1883-6267
Print ISSN : 0373-1006
47 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 本堂 武夫
    1985 年 47 巻 1 号 p. 1-2
    発行日: 1985/03/30
    公開日: 2009/07/23
    ジャーナル フリー
    氷の塑性の研究は古い歴史を持っているが, 今日なお多くの問題を提起する新しい研究課題でもある.氷河の流動のような地球物理学的問題や海氷の強度等の工学的問題そして格子欠陥の挙動等の物性物理学的問題等々, 今日氷の塑性は多方面から興味を持たれ研究されている.このような状況に鑑み, 日本雪氷学会雪氷物性懇談会では, 氷の塑性をテーマとする初のシンポジウムを昭和58年度雪氷学会秋季大会 (東京) に合わせて開催した.本特集はその時の講演内容を講演者自身にまとめて頂いたものであり, 氷の塑性研究の歴史とごく最近の基礎的研究の成果を広く雪氷学会会員に紹介するためのものである.
  • 中村 勉
    1985 年 47 巻 1 号 p. 3-13
    発行日: 1985/03/30
    公開日: 2009/07/23
    ジャーナル フリー
    1890年のイギリスのMcConnelによる単結晶の底面すべりの発見の様子がまず述べられた.次にいわゆるGlenの流動則の紹介と, 更に活性化エネルギーによる氷内部の変形機構の洞察の歴史, 中谷グループによる単結晶氷の変形実験とその変形機構説明のための転位論の導入, そして再びGlen達による低温度における氷の塑性の存在と, 不純物氷の変形挙動とその不純物の軟・硬化作用が述べられた.
  • 福田 明治
    1985 年 47 巻 1 号 p. 15-20
    発行日: 1985/03/30
    公開日: 2010/05/07
    ジャーナル フリー
    氷の基底面上の積層欠陥のエネルギーは低く0.9mJ/m2以下と推定される.このため, 氷の全ての転位は基底面上で拡張し, その幅は少なくとも200Åになり, 閉じて完全転位に戻る機会が殆んどない.拡張したこれらの転位の運動は基底面上に制限される.それで, 基底面上をすべり運動するa/3〈1120〉バーガース・ベクトルの転位が, 塑性変形の殆んど全てを担う.他のバーガース・ベクトルの転位が基底面上を運動するには, 上昇運動を含まなければならないので, その運動は極めて低速である.それで, これによる変形は微小であり, 巨視的観察では殆んど識別できない程度のものである.したがって, 氷の単結晶が基底面に平行なすべり変形しかしないようにみえる極端な異方性は, 結局, 基底面上の積層欠陥のエネルギーが極めて低いことに起因している.
  • 東 信彦
    1985 年 47 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 1985/03/30
    公開日: 2009/07/23
    ジャーナル フリー
    最近, ミクロな立場から静水圧下の氷の塑性を調べる実験が行われるようになり, 多くの興味ある情報が得られている.特に, 低歪速度の転位クリープ領域では, 静水圧が高いほど, 単結晶中の転位速度は遅くなるのに対して, 多結晶氷は変形しやすくなるということが単結晶氷及び多結晶氷を用いた静水圧下一軸圧縮実験から明らかとなった.このことから多結晶氷の定常クリープ速度は転位の基底面上のすべりに支配されているのではなく, 自己拡散による転位の上昇運動かその他のプロセスに支配されていると考えられる.本報告では最近の筆者らの研究を中心に紹介し, 静水圧下実験の有効性を述べるとともにその問題点についても指摘する.
  • 下田 茂, 石橋 達弥, 田村 隆, 鎌田 美昭
    1985 年 47 巻 1 号 p. 27-36
    発行日: 1985/03/30
    公開日: 2009/07/23
    ジャーナル フリー
    各種の防滑チェーンを装着したスノータイヤと路面間の粘着特性を理論的および実験的に検討した.1) 圧雪面, 氷結路面などに対するスノータイヤのトレッドパターンの滑り特性をモデル式で表わした.この式を基礎として導かれる理論式により, チェーン装着時の転動タイヤに関する粘着係数と滑り比の関係を計算した.2) 台上試験装置による転動タイヤの粘着力の測定結果は, 理論曲線とほぼ一致した.
    以上の結果から, チェーンの種類により, 圧雪面, 氷結路面での粘着力向上効果は大きく異なることが明らかにされた.騒音, 振動など乗りごこちへの影響, 路面やチェーンの損傷などの問題と併せて, 路面状況に適合した効果的な使用法に関する知見の一端が得られたものと思われる。
  • 加藤 一行
    1985 年 47 巻 1 号 p. 37-44
    発行日: 1985/03/30
    公開日: 2009/07/23
    ジャーナル フリー
    垂直な壁面を有する氷海構造物に作用する氷荷重に対して氷と構造物境界での摩擦係数の影響について理論的および実験的研究を行なった.従来摩擦が問題とされていなかった圧壊時の氷荷重については, 極限解析の上界定理を用いて摩擦係数の効果を定式化し, 表面材料を種々変えた模型実験で得た氷荷重と比較してほぼ良好な対応を得た.
    座屈破壊時の氷荷重に関しては, 数値解析が得られている自由境界と上下変位拘束境界という実際の境界条件の両極端の境界条件に対する解を結び付けるものとして, 氷板と構造物との境界での摩擦抵抗を考え, 実験的に摩擦係数が大きいほど氷荷重 (座屈荷重) が大きくなることを示した.
    以上の結果により, 垂直な壁面を持つ構造物に対しても, 傾斜面を有する構造物同様に, 氷荷重は氷板と構造物の境界での摩擦の影響を受けることが判明した.それゆえ, 氷板と構造物との摩擦を低減することにより, 氷荷重を低減できることが, 垂直壁を有する構造物に対しても明らかとなった.
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